今期、もっとも観るべきドラマは? ドラマ評論家が選ぶ、2019年冬ドラマ注目作ベスト5

2019年冬ドラマ注目作ベスト5

 2019年現在、朝からゴールデンプライム帯、深夜帯にかけて、現在約30作以上ものドラマが地上波にて放送中だ。各局、力の入った作品が並ぶが、本当に観るべきはどのドラマだろうか。ドラマ評論家の成馬零一氏に、冬ドラマから注目すべきタイトルのベスト5を選んでもらった。

1.『いだてん~東京オリムピック噺~』(NHK)

 『いだてん』は宮藤官九郎脚本の大河ドラマ。1964年の東京オリンピック開催に尽力した金栗四三(中村勘九郎)と田畑政治(阿部サダヲ)を主人公とした物語で、現在は明治を舞台としている。古今亭志ん生(ビートたけし)を語り部として配置したことで、物語は時間と空間を自由に行き来する他視点群像劇となっている。主演級の俳優が多数出演する全員主人公の物語といっても過言ではない。この、どこを見ても楽しめる登場人物の多様性こそが(現時点における)本作の最大の魅力だろう。同時に思うのは『池袋ウエストゲートパーク』(TBS系)から宮藤が連ドラで描いてきた男の子たちの物語の総決算となっていること。過去を舞台に実在する人物を描いていながら、出てくる男の子たちが過去のクドカンドラマに登場した人々を連想させ、特に天狗倶楽部の愉快な男たちは『木更津キャッツアイ』(TBS系)を思わせる。さながらクドカン版『坂の上の雲』(NHK)とでも言うような話となっているが、大河では鬼門となっていた現代史に、戦争ではなくスポーツを題材に切り込むことで、近代日本の男の子たちの成長と挫折を追求する姿からは目が離せない。今年一番の注目作である。

2.『トクサツガガガ』(NHK)

 『トクサツガガガ』は特撮オタクのOLを主人公にしたドラマ。オタクの恋愛を描いた『電車男』(フジテレビ系)からすでに14年も経つのに、今のオタクもあんなに必死で趣味を隠そうとするものなのか? それともこれは性別の差なのか? という点が理解できずに様子見していたが、話数が進むにつれて特オタの女性キャラが増え、同じオタクでも考え方に違いがあることが描かれてから、とても面白くなってきた。ドラマ内、ヒーロー番組と物語がパラレルな関係になっているのも面白く、続きが楽しみ。オタクモノにありがちな自己卑下的な笑いではなく、特オタであることを肯定的に描ければ、今の時代のオタクドラマとなりえるのではと期待している。

3.『ハケン占い師アタル』(テレビ朝日系)

 『ハケン占い師アタル』は、遊川和彦脚本の会社モノ。今まで家族や恋人といった個人的な関係性を掘り下げてきた遊川が、「会社」を舞台にした作品を描いているのは、労働問題や女性差別といった、今の社会の矛盾がすべて会社に集約されているからだろう。去年末に話題となった『獣になれない私たち』(日本テレビ系)や『ハラスメントゲーム』(テレビ東京系)、あるいは『下町ロケット』(TBS系)などの池井戸潤原作小説のドラマも含めて、会社を舞台にした作品は近年増えつつあるのは、人々の関心が一番集まっているのが「働き方」であり、それを女性主人公で展開すると、もっとも現代的な作品になるからだ。本作もまた、会社という年齢も性別もバラバラの人々が集まる舞台をうまく活かして、社員一人一人に焦点を当てることで現代的なドラマとなっている。毎回、一筋縄ではいかない遊川和彦作品だが、今回は本人が演出を担当していることも含めて、新境地となりそうである。

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