浅井隆が唱える“ポートフォリオ編成理論”とは? アップリンク吉祥寺の未来すぎる上映プログラム

アップリンク吉祥寺の未来すぎる上映プログラム

 東京は立川にある独立系シネコン、【極上爆音上映】等で知られる“シネマシティ”の企画担当遠山がシネコンの仕事を紹介したり、映画館の未来を提案するこのコラム、第35回は“アップリンク吉祥寺の未来すぎる上映プログラム”について。

 2018年12月に吉祥寺にオープンした映画館「アップリンク吉祥寺」。東急本店の奥にある渋谷館に続く2館目で、場所は駅北口を出てすぐの、パルコの地下2Fです。

スクリーンの割り振りって? 

 総座席数は300席で、いわゆる「ミニシアター」に分類される劇場ですが、なんと5つもスクリーンがあります。これが驚くべきポイントで、300という席数が決まっているなら、常識的に考えれば3スクリーン以下にするのが妥当なところなんですよね。

 その理由のひとつは、映画館というのはやはり大ヒット作品が出たときにどれだけたくさん入れられるかが稼げるかポイントのひとつだからです。たとえば僕の働いているシネマシティは最大劇場が380席ですが、近隣には500席のスクリーンを持つ映画館があり、全部の上映回が満席になるような大ヒット映画が来た場合は、1日あたり5回上映だとするとそれだけで600名の差がついてしまうわけです。

 なるべく大きな劇場を持ちたいけれども、大きすぎても長期的に考えればムダにする座席が増えるということでもあるので、ヒットしなかった、あるいは長く続ける映画のための、小さな劇場も欲しいところです。

 そう考えると、3つくらいに割り振って、無難に考えるなら150席/100席/50席というような感じにしたくなります。

 ちなみに3スクリーンで296席の新宿武蔵野館は「128席/85席/83席」という「大/中/中」という割り振り。433席のヒューマントラストシネマ渋谷は「200席/173席/60席」で「大/中/小」。TOHOシネマズシャンテは615席を「224席/201席/190席」という「中/中/中」のほぼ等分に振っています。こういうところにも劇場の性格や戦略が出て面白いです。

 アップリンク吉祥寺の割り振りは、「98席/63席/58席/52席/29席」です。これをもって「ミニシアターコンプレックス」を標榜しています。

 いくつものユニークな特徴を持つ個性的な劇場ですが、突出して僕が面白いと感じた、このスクリーン割り振りと驚くべき上映プログラムにテーマを絞って、この劇場が実現していることと目指していること、それを踏まえて映画館の未来の上映プログラムについての可能性について書こうと思います。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「映画シーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる