中村勘九郎、役所広司、ビートたけし……異色の大河ドラマ『いだてん』の魅力は“主人公”の多さ

『いだてん』の魅力は“主人公の多さ”にあり

 大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』(NHK総合)は、中村勘九郎演じる金栗四三と、阿部サダヲ演じる田畑政治の2人が主人公であり、オリンピックにまつわる日本人の物語が描かれていく。現在放送中のパートは、主に四三の話が中心になっているが、ともに本作を盛り上げる人物たちは実に様々である。嘉納治五郎(役所広司)ら大日本体育協会に関わる人々、三島弥彦(生田斗真)ら天狗倶楽部のメンバーたち、そして彼らの物語を1964年の人々に(視聴者である私たちにも)紹介する「噺」を務める古今亭志ん生(ビートたけし)などが登場するのだ。

 ここで気づかされるのは、“主人公”の多さである。もちろん、前述の通り公式には四三と田畑が本作の主人公である。だが、例えば1912年のストックホルムオリンピックに近い時代の物語は、四三を中心にした話として捉えることもできるが、同様に日本人初のオリンピック出場に向けて奔走する治五郎を“主人公”としたストーリーとして観ることもできなくはない。また、オリンピック出場を勧められたもう1人の人物である弥彦も四三と同じく、この物語の“主人公”なのかもしれない。さらに、今後展開されていく日本のオリンピック招致にまつわる物語も合わせれば、きっと『いだてん』の“主人公”は四三と田畑に限らないはずだ。明治から昭和にかけて、オリンピックをテーマにして日本の歩んできた道を振り返る時、関係するすべての人々が“主人公”になり得るということ。何となくそんな印象が見受けられる。

 当然、大会自体に関して言えば、出場するアスリートこそが舞台の中心にいるわけだ。ただ、オリンピックにまつわる事柄全体をドラマにしたとき、そこには様々な人たちの物語が集まっているはずだ。治五郎や可児徳(古舘寛治)のように日本人が世界で活躍するための礎作りに励んだ人々もいれば、播磨屋の辛作(ピエール瀧)のように足袋作りに心血を注いできた人もおり、熊本の家族のように四三を幼少期から大切に育ててくれた人々もいる。金栗四三の伝説や田畑の奮闘はもちろんのこと、その背景で描かれるべき“ドラマ”はいろいろなところに隠れているのだ。

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