深田恭子の何よりも強い“鈍感力” 『はじこい』物語に潜む3つの注目ポイント

『はじこい』物語に潜む3つの注目ポイント

 『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)の面白さは、三者三様の男たちのかっこよさや可愛さにキュンとするのは大前提として、1人の男子学生の真っ直ぐな想いに突き動かされるように(これは前クール同枠の『中学聖日記』とも共通するものがあるが)、自由で何でも手に入るはずなのに、本当に大切なものは何ひとつ手に入れることができていない大人たちが「一番大事なこと/人」のためにひた走る物語にある。そして、目下気になっているのが、スルーされ続けているけれど、しっかり存在を主張している3つの事柄だ。

 1つは、「初めて恋をした日に読む話」という本。原作である同名コミック(持田あき著)のことではない。初回にちらっと登場した、ヒロイン・順子(深田恭子)が手に取り、由利匡平(横浜流星)と塾で会った時に地面に叩きつけた“こじらせ女性の恋愛バイブル”「初めて恋をした日に読む話」のことだ。ドラマのタイトルと同一であるにも関わらず1話のほんの少しだけしか登場せず、順子はそんなバイブルのことなど存在すら忘れ果てたかのように、教え子・由利の東大受験に夢中だ。

 もう1つは、観覧車である。第1話の最初のショットはカメラの前を横切る順子とその婚活相手が見切れてしまうほど堂々とそびえ立っている観覧車だった。にも関わらず、その場面は愚か、現時点までのドラマ全編において、登場人物たちが実際に観覧車に乗ることはない。その、結果別れ話に発展してしまう観覧車及び、観覧車が意味するところの“遊園地”は、その後も頻繁に彼らの恋模様、あるいは勉強に夢中になる由利の心情表現として登場する。5話での、由利が勉強する「まるで遊園地に行ってきたかのような顔」、それを見ている順子の弾んだ声を聞いた山下(中村倫也)の「お前、遊園地に行ってきたような声だな」。東大受験に没頭する高校生と彼をサポートする塾講師、そしてその塾講師を巡る男たちの物語であるために、彼らは遊園地にも観覧車にも実際に行く余裕も暇もない。しかし、彼らが求め、夢中になる「ワクワクしてときめくようなもの」の象徴として、観覧車は、物語の随所で回り続けている。

 そして、3つ目、“最大のスルー”と言えば、深田恭子演じる順子の超がつく「鈍感力」の為せる様々な技だろう。舌ペロ、バックハグ、「そこにパイがあったから」と、次から次へと繰り出される三者三様のイケメン、横浜流星、永山絢斗、中村倫也の技が視聴者の多くをノックアウトしていると言うのに、それらを、慌てふためきながらもきれいにスルーしてしまう順子は、誰が何を思おうが、ただひたすら教え子“ゆりゆり”の東大受験に燃えている。

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