『いだてん』中村勘九郎×森山未來、シンクロした情熱 物語は明治から大正へ

『いだてん』中村勘九郎×森山未來、シンクロした情熱

 全4章で構成される大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』(NHK総合)。第13話は、第1章「ストックホルム大会篇」を締めくくる回だ。

 日射病でマラソンを走り切ることができなかった四三(中村勘九郎)。当日の記憶が曖昧な四三は、世話係のダニエル(エディ・アンドレ)に案内され、ことの顛末を改めて知る。また四三は、ライバルとして共に戦ったポルトガルのラザロ選手(エドワード・ブレダ)が日射病で亡くなったことを知らされる。しかし四三は再び走りだす。時を同じくして、孝蔵(森山未來)は緊張と戦いながら初高座に挑む。落語「富久」を演じる孝蔵は、最後まで演じきれないものの目を見張る才を見せた。

 まず注目すべきは、四三が再び走り出すまでの演出だ。四三の頭に蘇る倒れた日の記憶は苦々しいものだった。ペトレ一家の庭先で倒れた四三をダニエルたちが迎えにきた。自分が置かれている状況を理解した四三は、立ち上がって走り出そうとするのだが体が追いつかない。ふらつく四三と同じようにカメラが大きく揺れ動き、彼の姿を映しきれない。この演出から日射病の猛威が伝わってくる。四三は帰りの車中でむせび泣き続けた。中村は四三を演じる中で、彼が味わってきた悔しさを追体験したのかもしれない。涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにして泣き続ける中村の姿は、四三が当時味わったであろうやるせなさを想像させる演技だった。

 また四三は、弥彦(生田斗真 )からライバルだったラザロ選手が日射病で亡くなったことを知る。四三はなかなか言葉が出ず、すぐには彼の死を受け止められない。ラザロと同じ道を選んでいたら、四三も命を落としていたかもしれなかった。しかし走りきれなかった悔しさから「ばってん、それでよかったとか」と呟く四三。そんな彼に弥彦は語気を強めてこう言う。「よかったに決まっている! 死んだら君、二度と走れんのだぞ!」

 無念の敗北、ラザロの死。四三が受け止めなければならない現実はあまりにも重い。だが弥彦の言葉や恩師・嘉納治五郎(役所広司)、大森兵蔵(竹野内豊)、安仁子(シャーロット・ケイト・フォックス)、東京高師の面々、家族……四三がストックホルムの地に降り立つまでに関わってきたすべての人の「頑張れ」という思いが四三の心を支える。それになにより、四三は純粋に走ることが好きなのだ。

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