『ダンボ』『アラジン』『ライオン・キング』も 実写制作の増加から考えるディズニー作品の未来

実写制作から考えるディズニー作品のあり方

 ティム・バートンが監督を務めた実写版『ダンボ』が公開され、手描きのアニメーションとは異なる、リアルに表現されたダンボの姿に注目が集まっている。また、ダンボが飛翔する場面や、ダンボと隔離された母親が鼻を伸ばして互いに抱擁するなどの名シーンも、新しいヴィジュアルによって再現されている。

『アラジン』(c)2018 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved

 ディズニー・アニメーションの過去の名作を実写化する映画企画は、いまやお馴染みのものとなっている。近年、『シンデレラ』(2015年)、『ジャングル・ブック』(2016年)、『美女と野獣』(2017年)、『プーと大人になった僕』(2018年)などなど、ファンに愛されるディズニー・クラシックのラインナップが、CG技術の進歩によって続々とリアルな表現で再映画化されているのだ。そのなかには、賛否を呼んだものもいくつかあるが、さらに今後も、『アラジン』(2019年予定)、『ライオン・キング』(2019年予定)、『ムーラン』(2020年)が控えるなど、この流れは勢いを増して継続中である。

 しかし、なぜ近年になって、ディズニーがこんなに多くの実写化作品を提供するのか。そして、それは何を意味しているのだろうか。ふたたび創造された各作品の評価や、その内容も踏まえながら、今後のディズニー作品のあり方について考えていきたい。

 ディズニー作品のなかでアニメーションの製作を担当するのは、「ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ」。実写映画を製作しているのは、「ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ」である。ディズニーアニメの実写化作品を手がけるのは、この後者にあたる。

 そんな「ウォルト・ディズニー・ピクチャーズ」は、1946年、『南部の唄』から実写映画の製作を始める。代表的なところでは、『メリー・ポピンズ』(1964年)、『トロン』(1982年)、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズ(2003年~)、『魔法にかけられて』(2008年)などが有名だ。

 ディズニーの過去の名作アニメーションを実写化する企画は、『101匹わんちゃん』(1961年)を基に、グレン・クローズが悪女クルエラを演じた『101(ワン・オー・ワン)』(1996年)が先駆けとなっている。とはいえ、これは単発的な実写化企画に数えられるだろう。ちなみに、『ラ・ラ・ランド』(2016年)のエマ・ストーンが若い頃のクルエラを演じるスピンオフ”Cruella(クルエラ)”の企画も、現在進行中だという。

 いまの実写化企画の流れが生まれたのは、『ふしぎの国のアリス』(1951年)を実写化した、ティム・バートン監督の『アリス・イン・ワンダーランド』(2010年)からだ。約2億ドルという、ハリウッド映画のなかでは上限クラスの大作であり、当時の最新技術で美麗に表現された“ふしぎの国”に注目が集まるとともに、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズで人気絶頂のジョニー・デップ出演作ということもあって、この作品は世界での興行収入が10億ドルを達成する大ヒットとなった。ここまで稼ぎ出してしまえば、続編企画はもちろん、「他にも映画化できる企画はないのか」という話が出てくるのは必然的であろう。

 とはいえ、『アリス・イン・ワンダーランド』は、アニメーション版のファンからはきわめて評価の低い作品でもある。その理由は、もともとアニメーションが、原作に準拠してナンセンスな世界を表現した、感覚的でアーティスティックな内容だったのに対し、実写版はそこに“ふしぎの世界を救う”という要素を追加して、単純化された勧善懲悪の典型的娯楽映画にしてしまったことが大きいように思われる。しかも、そのような内容の映画を、「ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ」出身でありながら、これまでにディズニーとは異なる反逆的な価値観を提供してきたバートン監督が作ってしまったということが、より反発を呼ぶ原因になったのではないだろうか。

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