『マローボーン家の掟』監督が語る、70年代サスペンス/ホラー映画から受けた影響

『マローボーン家の掟』監督が語る映画愛

 『ジュラシック・ワールド/炎の王国』の監督、J・A・バヨナが初の製作総指揮を務めた映画『マローボーン家の掟』が4月12日より公開された。

 本作の監督は、J・A・バヨナの監督作『永遠のこどもたち』『インポッシブル』の脚本を手がけたセルヒオ・G・サンチェス。彼にとっては監督デビュー作となる。海沿いの森の中にひっそりと佇む⼤きな屋敷に住むマローボーン家の4⼈兄妹は、不思議な“5つの掟”に従いながら、世間の⽬を逃れるように⽣きていた。忌まわしい過去を振り切り、この屋敷で再出発を図る彼らだったが、⼼優しい⺟親が病死し、凶悪殺⼈⻤である⽗親を殺害したことをきっかけに、4⼈の⽇々が崩れ出す。主演は『サンシャイン/歌声が響く街』『はじまりへの旅』のジョージ・マッケイで、4人兄弟の長男、ジャックを演じる。

 J・A・バヨナとは古くからの友人であるというセルヒオ・G・サンチェス。制作背景からインスピレーションもととなった絵画作品、そして意外な展開が待ち受けるラストシーンに至るまでの演出について、話を聞いた。

監督としての自由を守ってくれたJ・A・バヨナ

ーーあなたにとって『マローボーン家の掟』は監督デビュー作となります。脚本家としては以前から活躍していましたが、監督業への興味も、もともと持っていたんですか?

セルヒオ・G・サンチェス(以下、サンチェス):僕は脚本家になりたいと思ったことはなくて、常に監督をやりたいと思っていたんだ。ニューヨークの映画学校を出た時に、すでに『永遠のこどもたち』のもとになる短編の脚本を書いていた。それを読んだJ・A・バヨナとギレルモ・デル・トロがすごく気に入って、バヨナが『永遠のこどもたち』を監督することになったんだ。『永遠のこどもたち』から『インポッシブル』『ヤシの木に降る雪』と3本続けて自分が脚本を書いた作品がヒットしたから、今度こそは自分で監督をしたいと思っていたよ。『マローボーン家の掟』はロケ場所は一つで、主な登場人物が5人。低予算で実現できると思ったので、自分で監督したいとこの企画を始めたんだ。

セルヒオ・G・サンチェス

ーーJ・A・バヨナとは古くからの友人なんですよね。 

サンチェス:そうだね。今回、バヨナは私の自由を守るためにかなり手助けしてくれた。バヨナが映画を撮る時に、ギレルモ・デル・トロが製作総指揮でいたような関係と、ちょうど同じようなものだね。技術的なことや美術的なこと、僕がやりたいことをできるだけ叶えられるように、他からの介入から、僕の監督としての自由を守ってくれたんだ。

ーー『マローボーン家の掟』製作においては、どのようなやりとりがありましたか?

サンチェス: どちらかというと、撮影の時よりは編集の時にいろいろなアドバイスをもらったね。『マローボーン家の掟』は非常にバランスが必要な映画なので、ジャンル映画にならないように気配りしてくれた。バヨナには「観客を二度三度驚かすようなところを作ったら、そのあとはドラマに重きを置くように」と教えてもらったよ。この作品はサスペンスだけど、「サスペンスのフェアリーテイル(おとぎ話)」のようにしたいと思っていたから、そのバランスに関しては、バヨナがアドバイスをしてくれた。

ーーあなたにとって最もチャレンジングだったことは?

サンチェス: 一番難しかったのは、物語を進めるうえで基本となる部分を崩さないようにすること。観客はジャックの目線で物語を観るわけだけど、ジャックの感情には“本当のこと”じゃないことがたくさん隠されているよね。だからこそ、家族を描いているシーンでも、恋愛を描いているシーンでも、サスペンスタッチのシーンでも、大前提として兄妹とジャックの間に「僕たちはひとつだ」という気持ちがあることを崩さないようにしたかった。また、観客に対しては常にジャックを通して間違った情報が与えられるので、最後までその緊張感を引っ張っていけるか、そして最後に納得のいく物語にできるか、という点も気を遣ったね。

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