『わた定』を見て「働き方改革」について考える 向井理と中丸雄一、正反対の男性が描かれる意図

『わた定』を通して「働き方改革」について考える

 『わたし、定時で帰ります。』(TBS系)はまさに今の世相を反映したドラマだ。

 「働き方改革」は国が掲げる一大ミッションでもあり、よほど時代に取り残された企業以外はこの改革との向き合い方に頭を抱えていることだろう。実際に現場で起きている様々な軋轢、ケーススタディがドラマ内でも再現されている。

 吉高由里子演じる主人公の東山結衣は定時に帰ることをポリシーとする32歳、独身のWebディレクター。やるべきタスクは定時までに抜かりなく終わらせ、残業は一切しない。周囲がどんなに忙しそうにしていても、仕事の依頼が追加で振られそうになっても「定時なんで帰ります」と言って帰路につく様は見ているこちらとしても清々しいくらいだ。

 ただ、彼女は事務職でもなければ、変化が激しくなんとなくイレギュラー対応も頻繁に起こりそうなイメージがあるWeb業界に身を置いている。

 この作品がもちろん「腰掛けOL」の物語でないのは言うまでもないことだが、反対に先進的で時代の流れに敏感なある意味“意識高い系”の人間にだけ共有される話としても終わらず、誰にとっても無視できない内容として成立しているのは、結衣のスタンスにあるだろう。

 まず、権利だけを主張するモンスターと化していない点は大前提として挙げられる。第1話でも、PCの画面にその日のタスクを書いた付箋を貼り、完了したものから外していく仕事の捌きぶりは見事であった。やるべきことを効率的に片付け、かと言って一匹狼という訳でもなく新卒社員への適切な声かけなどのフォローも忘れない。

  
 また、元婚約者の種田晃太郎(向井理)が副部長として結衣の会社にジョインすることになった際にも、「私はただでさえ定時帰りで周囲から浮いているのに、これ以上やりづらくなるのは困るから大人しくしていたい」と、種田と自分の過去を周囲に知られないようにと釘を刺していた。他人からの見られ方もきちんと認識できており、自身の定時上がりが少数派だと重々承知している。至極真っ当な常識人で、硬派という印象さえ受ける。

 何より結衣が秀逸なのは、定時帰りを周囲に強要しないことだ。

 「自分は正しいことをしている」と自身の正義感を振りかざしたり、無理矢理それを他人に押し付けたりしない。新卒で入社した大手旅行代理店で倒れてしまった経験から、自分の仕事への向き合い方、会社との距離感をしっかりと見直し、今の働き方を自身の意思で貫いているのだ。だからこそ、人の働き方にも無闇に口を出さないし、決して批判をしたりしない。

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