中丸雄一と向井理の異なる仕事観 『わたし、定時で帰ります。』は変わり続ける時代の美徳を描く

『わた定』は変わり続ける時代の美徳を描く 

 「俺が働いてたころとは、時代が違うんだな」

 連日の残業、休日返上の接待ゴルフ、家族よりも仕事優先の日々に、文句一つ言わずジッと耐え抜く……東山結衣(吉高由里子)の父は、そんな働き方を「日本の会社員の“美徳“」と語った。夫は仕事のことだけを考えていればいい、家や子どものことはすべて妻にお任せ、という夫婦像が“当たり前“とも。

 『わたし、定時で帰ります。』(TBS系)の第7話で見えてきたのは、父と娘の幸せを巡るすり合わせだった。家族旅行も一緒に楽しめなかった父に、寂しさを抱き続けてきた結衣は「お父さんみたいな働き方は絶対しない」と反発。日本の会社員の“美徳“と言われた日常的な残業にも、慣習的な付き合いにも「No」と言い続けてきた。

 そして、母もまた結衣と同様、そんなパートナーに寂しさを感じていたのだろう。このやるせなさも、定年退職まで。きっと、そのあとはゆっくりと夫婦水入らずで過ごせるはずだと思っていたのに、仕事人間の父は変わらなかった。相変わらず付き合いを優先し、妻の誕生日を忘れてゴルフ旅行へ。我慢の限界に達した母は父に、熟年離婚を突きつけて家出してしまうのだった。

 突然降り掛かった、両親の熟年離婚騒動は家庭的な恋人の巧(中丸雄一)との結婚を間近に控えた結衣にとって大きなストレスになっていく。男性がキッチンに立つことは結衣にとっては“当たり前“だが、父がキッチンに立てば消防車が出動する大きなボヤ騒ぎに。電子レンジや電気ポットの使い方も、生活に必要なものがどこにあるかもわからないと、ひっきりなしに連絡が来る。

 その連絡頻度の高さを見て、定年前の仕事ぶりが目に浮かぶようだった。おそらく、そんなふうに相手の状況を想像する間もなく仕事の連絡もしていたし、されていたのだろう、と。そして、仕事とはそういうものだ、と疑いもしなかった。なぜなら、今よりも転職に対するハードルも高く、定年まで同じ場所で働き続けることが“常識“とされてきたから。

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