『貞子』は楽しく怖がることができるジャンル映画に “ポップ化”以降の貞子の存在を検証

映画『貞子』はジャンル映画に

 鈴木光司の小説を原作に、次々と人間が殺されていく呪いのおそろしさを巧みな演出で描き、話題を呼んだ映画『リング』(1998年)、そして『リング2』(1999年)。「Jホラー」ブームの火付け役であり代表作ともなった、この2作によって、ハリウッドでもリメイク作が作られるなど、世界でその恐怖演出は高く評価され続けている。その公開から約20年あまりを経て、オリジナルの監督・中田秀夫が、再び日本の『リング』シリーズの監督として帰還した。

 そのタイトルは、「呪いのビデオ」を見た者を7日目に死に至らしめるという、長い黒髪がトレードマークの強烈なキャラクターの名前をそのまま使用した、『貞子』。ここでは、久々のオリジナル監督による恐怖表現をひもときながら、貞子という存在についてや、映画としての出来がどうだったのかを評価していきたい。

 原題が『First Blood』である、シルヴェスター・スタローンの代表作 『ランボー』が、シリーズ4作目にして、ついに『Rambo』というタイトルになったように、続編で登場人物の名前がそのままタイトルになる『ジェイソン・ボーン』シリーズや『リディック』シリーズなどと同様、キャラクターの名前がタイトルとなる『貞子』もまた、シリーズのなかで絶対的な存在感を発揮してきたからこそ、掲げることができるタイトルといえるかもしれない。

 中田監督がシリーズを離れている間、日本の『リング』シリーズは他の監督によって4作作られてきた。人を呪う存在となるまでの秘話を描く『リング0 バースデイ』(2000年)、貞子の呪いが動画サイトにまで進出する『貞子3D』(2012年)、『貞子3D2』(2013年代)、そして「Jホラー」における、もう一つの代表キャラクターと貞子が死闘を繰り広げる『貞子vs伽椰子』(2016年)……。

 本作『貞子』については、公開前から一つの懸念があった。それは、20年の間に貞子というキャラクターが、映画の内外において、すっかりマスコット化し、あまりおそろしい存在ではなくなってしまったということだ。これは『貞子3D』から顕著になってきた動きである。

 フィギュアやTシャツ、キーホルダーが発売され、サンリオとコラボしてキティちゃんのようにリボンをつけてみたりなどは、まだ序の口。映画のプロモーションでは、プロ野球の始球式に登場したり、ミュージックビデオでギターを演奏したり、ハンバーガーのチェーン店で1日店長を務めるなど、その存在のポップ化は多岐にわたる。さらにパチンコの機種にまでなった『CRリング』シリーズでは、フィーバーすると貞子に脅かされるという、意味の分からない演出がある。

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