結婚、仕事、家族、残業……『わたし、定時で帰ります。』が描く、人生における“選択”の難しさ

 毎日のあれこれを、自分が思った通り、好きなように選んで決められる人は、どのくらいいるのでしょう。私たちは「定時で帰る」という、本来当たり前なことさえなかなか選べません。次々やってくる仕事、周りの目。だからそんな中で自分を貫いて定時で帰り続ける『わたし、定時で帰ります。』(TBS系)の東山結衣(吉高由里子)が、キラキラとまぶしい。

 けれどそんな彼女でも思うように選べない、どうしようもないことが起きるのが、人生です。突然また同じ職場で働くことになった元恋人の種田さん(向井理)を嫌いになってはいない、むしろその仕事ぶりを尊敬もするけれど、今は婚約者がいる。婚約者の巧(中丸雄一)は、料理などを自然にこなす、理想的な相手に思えるけれど、プロポーズされてお互いの親への紹介まで終わった今、小さな価値観の違いがチラチラと見え隠れする。どちらかを選べと言われたら……と、毎回テレビの前で勝手に考えているのは私だけではないはず。

 同僚たちも、「愛する家族がいる」「仕事がうまくいってる」から幸せ、というわけではなく、家族がいるからこそそれに伴う「介護」「育児」で新たな違う選択をせまられるし、会社組織に合わせて、自分の働くペースを崩す必要も出てくる。パワハラやセクハラなど、ひどいことが起きた時にどう戦うか、これも(本当ならシンプルに訴えて終わりにしたいところだけれど)選択をしないといけない。

 これだけ選択することが多いのに、私たちはそのすべてでちゃんと「正しい道」を選べているのだろうか。間違えていたらどうしよう。この矢印の方向は正解? 考えると恐ろしくなることもあります。

 6月4日の第8話では、ワーキングマザーの賎ヶ岳先輩(内田有紀)が、家庭を選び、会社を休業することに。頭を下げる彼女を見て、同僚の三谷さん(シシド・カフカ)が声をあげる。

「休んでも居場所はなくならない、そうですよね東山さん」

 それは第1話で、無理して働く三谷さんに、休んでいいんだと結衣が言ったのと同じセリフ。自分の選択を応援してくれた人がいる、そのことはまた他の誰かの選択を応援する力になる。

「こっち選んでよかったって、そう思える人生になるように、がんばる」

 そう、どの道を選択しても、結末を決めるのは自分自身なんですよね。そう思ってなんとか、選び続けるしかないのです。

■渡辺裕子(わたなべひろこ)
TVドラマ好きイラストレーター。「月刊ローチケHMV」などで、コラム連載中。
ツイッター:https://twitter.com/satohi11

■放送情報
火曜ドラマ『わたし、定時で帰ります。』
TBS系にて、毎週火曜22:00~放送
原作:朱野帰子『わたし、定時で帰ります。』シリーズ(新潮社刊)
出演:吉高由里子、向井理、中丸雄一、柄本時生、泉澤祐希、シシド・カフカ、内田有紀、ユースケ・サンタマリアほか
脚本:奥寺佐渡子、清水友佳子
演出:金子文紀、竹村謙太郎
プロデューサー:新井順子、八尾香澄
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/watatei/

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