『Heaven?』現代社会のムードに合致 『シン・ゴジラ』を思い出す、石原さとみの演技がカギに

『Heaven?』は現代社会のムードに合致

 自由奔放なオーナー・黒須仮名子(石原さとみ)によって集められた従業員たちが、墓地の真ん中に佇むフレンチレストランを舞台に一致団結して奮闘する様を描くTBS系列火曜ドラマ『Heaven? 〜ご苦楽レストラン〜』がスタートした。本作の原作は、2003年にドラマ化された『動物のお医者さん』や今年ドラマ化された『チャンネルはそのまま!』などで知られる人気漫画家・佐々木倫子の同名コミック。じつに16年前に連載が終了した原作がこうして2019年にドラマ化されるというのは、本作の持つテーマ性が現代にも通じるということなのだろうか。

 何にも流されることなく、ひたすら我が道を思ったままに突っ走っていく仮名子のスタイルによって、生真面目で融通のきかない性格の伊賀観(福士蒼汰)をはじめとした個性的すぎる登場人物たちが振り回されていき、“変化”するのではなくその個性を周りに受け入れられ、認められて伸ばしていく。そして相手のペースに従うでも反発するでもなく“諦観”の姿勢で互いにのんびりと交わしあう。いかにも、現代社会のムードに合致するといえよう。

 今回の第1話では、「この世の果て」を意味するフレンチレストラン“ロワン・ディシー”のオープニングパーティまでの七転八倒が描き出される。そもそも立地が最悪なことに加え、経営について何も知らない仮名子に、伊賀以外の従業員はフレンチレストランの作法をひとつも知らない。そして保健所のチェックやエアコンの故障、ひいては仮名子がパーティの招待状の日付を間違えていたことなど次から次へと波乱が起きていくが、そのたびにのらりくらりと問題を解決していく。さらに時にぶつかり合う彼らの関係性が古典的なノリで描かれていくあたりはとてもユニークに映り、エイプリルフールと勘違いされたかもしれないと気付く場面や、エアコンから積年の埃が吹き出るくだりなどは、最近のコメディドラマではあまり見ない、堂々たるコント演出で笑いを誘う。

 もともと原作では伊賀が主人公として描かれていたが、このドラマ版では仮名子が主人公という位置付けに脚色が施されている。とはいえこのドラマの大きな核となるのは、やはり正反対な2人のキャラクターにほかならない。とくに、まるで『シン・ゴジラ』のときのカヨコ・アン・パタースンを思い出させるようなクセの強いキャラクターに扮した石原さとみの演技は、本作においてドラマ性とコメディ性の両方を司る、主人公以上に重要なポジションといえるだろう。

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