異例のヒット『新聞記者』を巡る三つの違和感

『新聞記者』を巡る三つの違和感

 先週末の映画動員ランキングは、『アラジン』が土日2日間で動員46万8000人、興収6億9900万円をあげ5週連続トップに。公開から31日目となる7月7日(日)の時点で動員598万6400人、興収85億6043万500円。今後、『トイ・ストーリー4』(7月12日公開)、『ライオン・キング』(8月9日公開)と同じディズニー配給による有力作品の公開も控えているが、興収100億円突破は確実な情勢だ。

 今回取り上げるのは、前週の10位から8位へとランクアップした『新聞記者』。ランキング上の上昇だけでなく、公開初週の週末3日間と2週目の週末3日間の対比でも、動員で102.9%、興収で104.1%と前週を上回っていて、7月8日(月)までの11日間で早くも興収2億円を突破している。143スクリーンでスタートした小〜中規模公開作品であることをふまえると、これは異例のヒットである。

 興行的な観点からまず注目したいのは、その公開時期だ。プロデューサーの河村光庸氏は、参院選目前のタイミングで本作を公開した理由について訊かれて、「政治の季節をもちろん意識しています。たくさんの人に見てもらいたいので、参院選を狙いました」(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/257085)と明言している。政治的イシューを扱った作品を選挙の時期を見据えて公開するのは、例えばマイケル・ムーア監督の『華氏911』(2004年)や『華氏119』(2018年)でもとられた手法で、単に多くの動員を狙えるだけでなく、それがプロパガンダとしても有権者にダイレクトな影響を与えるという二重のメリットがある。今回の『新聞記者』のヒットはその狙いが見事に「当たった」わけで、そのこと自体は日本の映画興行に新風を巻き起こした快挙と言っていいだろう。

 『新聞記者』を巡っては、作り手や作品を手放しで称賛する声も映画業界内から上がっているが、そこでは製作の背景や志に関するものと、作品そのものに関するものが混在しているように見受けられる。それを踏まえて、ここでは三つの違和感を提示したい。以下は、『新聞記者』を取り巻く現在の状況に水を差すものではなく、より活発な議論を促したいという意図によるものだ。

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