『ゴールデン・リバー』監督が語る映画の役割 「“共存”というテーマに強く惹かれた」

『ゴールデン・リバー』監督が語る

 第75回ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞(監督賞)及び「フランスのアカデミー賞」と言われるセザール賞にて4冠(監督賞・撮影賞・美術賞・音響賞)を受賞した映画『ゴールデン・リバー』が全国公開中だ。イギリスの文学賞の1つである“ブッカー賞”の最終候補作にもなったパトリック・デウィットの『シスターズ・ブラザーズ』を映画化した本作は、ゴールドラッシュが巻き起こった1851年のアメリカを舞台に、無骨で優しい兄・イーライ(ジョン・C・ライリー)と、裏世界でのし上がりたい好戦的な弟・チャーリー(ホアキン・フェニックス)という最強の殺し屋・シスターズ兄弟、政府の内密な依頼で黄金を探す化学式をみつけた化学者・ウォーム(リズ・アーメッド)、標的の居場所を殺し屋に報告する連絡係のモリス(ジェイク・ギレンホール)の追走劇を描く。

 今回リアルサウンド映画部では、初となる全編英語作品に挑戦したジャック・オーディアール監督にインタビュー。西部劇というジャンルに込めた意味、キャストとの共同作業、監督業において重視していることについてまで話を聞いた。

 「素晴らしい俳優たちで、すごく楽しい撮影だった」

ーー今まで様々なジャンルに取り組んできたオーディアール監督ですが、西部劇に挑戦するのは初めてです。

ジャック・オーディアール(以下、オーディアール):西部劇に関しては、実はあんまり詳しくないんだ。ただ、西部劇は、兄弟、男の関係を描くことを可能にするジャンルだったし、権力、金銭欲、自然破壊……そういったたくさんのテーマを扱えるものだとは思っていた。

ーージョン・C・ライリー、ホアキン・フェニックス、リズ・アーメッド、ジェイク・ギレンホールの4人との共同作業はいかがでしたか?

オーディアール :素晴らしい俳優たちで、すごく楽しい撮影だった。みんなそれぞれ個性が違うんだ。ギレンホールとは、事前にメールやSkypeで連絡を取り合って役作りをしていた。彼は、撮影前からコロンビア大学の言語学者に、自分のセリフの発音を聞かせることで、本作の時代設定である1850年代の若いインテリならではのアクセントをマスターしていた。彼は常に慎重で、テイクを重ねる中でどんどん役を深めていくタイプだね。反対にフェニックスは、自身のことを「プロの役者じゃない」と何度も言っていたけれど、それは彼がテイク毎に違うことに挑戦するからだ。とにかく4人に共通するのは、登場人物そのものになれる役者だということ。決して借り物のキャラクターを演じているわけじゃないんだ。

ーーウォームとモリスという2人の人物設定を、映画化にあたって大きく変えた理由は?

オーディアール :原作は大好きだし、シスターズ兄弟のアクティブな性格が見事に表現されていると思う。だけど、ウォームとモリスは型通りで、面白いキャラクターとしては描かれていなかった。追走劇は、追われる者も追う者も魅力的じゃないとダメなんだ。だから映画化に際して、ウォームが黄金を使って、ユートピア的世界の構築を目指し、モーリスがそんなウォームに次第に感化されていくという設定を加えた。このことで、ウォームとモリスは、シスターズ兄弟と競うくらい興味深いキャラクターになったと思う。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる