映画の国際共同製作が増加する背景とは そのメリットと日本映画界の課題を深田晃司監督に聞く

深田晃司監督が語る国際共同製作のメリット

 本物のアンドロイドを出演させた深田晃司監督の『さようなら』(2015年)を観た人は、ヒューマニティやAI時代の到来を扱った壮大なテーマが繊細な日常の視点で見事に語られた物語に、息をのんだに違いない。その後も、カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で審査員賞に輝いた『淵に立つ』(2016年)では危うい家族の絆を、『海を駆ける』(2018年)ではインドネシアの人々と在住日本人たちの絆をとおして、人間の関係性や人生の不条理を静かに、かつ深遠に映し出した。深田ワールドに潜む衝撃的な物語性は観る者の皮膚を突き刺す。そんな彼の世界観が炸裂した話題作『よこがお』が7月26日より公開されている。

 復讐劇を描いたサスペンス、人間の多面性を映し出したヒューマンドラマ、マスコミに警鐘を鳴らす社会派……様々なレイヤーに包まれた本作はジャンルのつけようがない作品だ。深田晃司監督へのインタビューをもとに新作や日本映画界が抱える課題について考えていきたい。

普及していないオーディション文化

 主演俳優、筒井真理子の美しい“よこがお”にインスパイアされて生まれたという『よこがお』。「半身は見えているけれど、半身は見えない」という人間の横顔から、「一度には見ることのできない人間の複雑な多面性」を見てもらえるような構成にしたという。

 脚本の執筆時点から制作にかかわったという筒井真理子、彼女と釣り合う演技力で対峙できる池松壮亮、どこか秘めている攻撃性を“佇まい”で表現できる市川実日子、ベテランの大方斐紗子、そして市子を優しく見守る吹越満を監督自身がキャスティングしたが、残りのキャストはオーディションで起用した。だからこそ、本作の俳優陣の演技はメインキャストを筆頭に非常にナチュラルで説得力があり、俳優のイメージがキャラクターから決してはみ出ていない。

 しかしながら、深田監督が説明するには、欧米と比べて日本ではオーディション文化がまだまだ根付いていないそうだ。

「日本では、“有名な俳優さんに声をかける=役のオファーである”というのが一般的で、それは色んな意味でもったいないと思っています。まだ無名の俳優さんにとっては出演の機会が限定されてしまいますし、逆に人気のある俳優さんにとっては自分で仕事を選ぶことができず、オーディションを通してチャレンジしたり自分の出たい映画に出たりすることができないので、基本的に待つことしかできなくなってしまう。映画界の問題というよりは、俳優さんが主体的にやりたい仕事ができなくなるというのが問題だなと思っています」(深田監督、以下同)(※1)

 もちろん、欧米でも指名によるキャスティングで俳優が決められる場合も多々あるが、あの娯楽大作『アベンジャーズ』のアイアンマンを演じるロバート・ダウニー・Jr.でさえもオーディションで選ばれているのだ。

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