怪しさMAX! 『あなたの番です』後半戦からの刺客・田中哲司、名バイプレイヤーぶりを堪能

『あなたの番です』後半戦からの刺客・田中哲司

 今夏大注目のドラマ『あなたの番です』(日本テレビ系)にて、後半戦から参戦してきた田中哲司。敵か味方か分からぬ存在として、激化するドラマの盛り上がりに一役買っている存在だ。

 田中が演じる南雅和が登場してきたのは、この第二期から。立て続けに起こる陰惨な殺人事件によって「家賃が下がっていたから」という理由で、マンション・キウンクエ蔵前に越してきた謎の男だ。そんなある種の不純な動機で現れた部外者であるうえに、異常なまでに図々しく、無神経な態度がいちいち鼻につく存在である。第15話で、彼は自らを「事故物件住んでみたい芸人!」だと名乗っており、それを証拠付ける動画まで披露していたが、なんとも信用ならない。傷つき、怯える人々を前に、「ネタにして笑い飛ばしてやるから協力しろ」なんて傲慢なことまでも軽々しく口にする男なのだ。

 わざわざ訳ありマンションに入居……こんな怪しさMAXの男だが、そう感じさせるのは、このキャラクターの設定だけではもちろんない。演じる田中は野太い声を大小高低と巧みに操り、180センチ超えの大きな身体で駆け回っては、他を圧する。遅れての参加組でありながら、問題だらけの居住者たちに負けぬレベルの問題ぶりで溶け込んでいるのだ。個性的なキャラクターが何人も名を連ね、誰もが“怪演”と呼べる好演を披露してきた中、田中もまた十二分に張り合う力を見せているのである。

 そんな田中が押しも押されぬ名バイプレイヤーであることは周知の事実だろう。蜷川幸雄、串田和美、長塚圭史、野田秀樹ら演出家に愛され、ウィリアム・シェイクスピアやサミュエル・ベケットなどが生み出した古典劇、それから現代劇まで、幅広いジャンルの作品で舞台に立ち続けてきた。テレビドラマでの活躍も、ゲスト出演したものまで含め、かなりのタイトル数にのぼる。映画に関しては、コメディにラブストーリー、ヒューマンドラマに社会派ドラマ、バイオレンスと、まさになんでもござれ。北野武などの巨匠から、園子温や三浦大輔といった鬼才、そして若手監督たちからのラブコールが鳴り止まないことからも、彼がいかに信頼度の高い俳優かが分かるだろう。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アクター分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる