杏、ドラマ復帰作『偽装不倫』でアラサー女性を熱演! コメディで生かされる人間くささ

『偽装不倫』杏がコメディで発揮する魅力 

 「水10」(日本テレビ系)に放送されているドラマ『偽装不倫』は、出産・子育てのために2016年から女優業を休んでいた杏のドラマ復帰作である。

 主演を務めた連続テレビ小説『ごちそうさん』(NHK総合)で共演した東出昌大と2015年元日に結婚し、いつの間にか三児の母となった杏だが、『偽装不倫』で演じる濱鐘子は、31歳未婚の派遣社員。しかも、彼女は3年間続けた婚活がうまくいかずに疲弊しており、そんな旅先の飛行機で知り合った帰国子女で年下のイケメン・カメラマンの伴野丈(宮沢氷魚)と、ふとした行き違いで人妻だと言ってしまったことから(偽装)不倫の関係になってしまう。

 実際の杏は三児の母で、アラサー独身の鐘子とは置かれている状況は真逆である。しかし、ドラマを見ている時はそういう齟齬をまったく感じさせず、ちゃんと鐘子になりきっており、むしろ水を得た魚のように生き生きと演じている。

 『偽装不倫』は楽しいドタバタが続くコメディテイストの恋愛ドラマなのだが、物語の節々で、鐘子が婚活を続ける中でいかに疲弊していたかを、か細いモノローグで回想される。この時に感じる鐘子の孤独感こそが、本作の核だと思うのだが、そのことを杏はよく理解している。

 普段の鐘子は、表向きは明るく楽しそうで、家族の前では、婚活のことも自虐的に笑いのネタにできる余裕がある。しかし、丈に優しい言葉をかけられた時に、はじめて自分が傷ついていたのだと気づき、ダムが決壊したかのように辛い記憶が言葉と共に溢れ出す。

 鐘子のような仕事も恋愛も不安定な立場にいるアラサー女性の姿を、真逆の環境にいても、ちゃんと演じられるのは、杏の核の部分に鐘子を理解できる素養がしっかりとあるからなのだろう。

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