『ONE PIECE』『ヒロアカ』『キングダム』……映画ヒットの裏に原作者の監修あり?

ヒットの裏に原作者の監修あり?

 劇場版『ONE PIECE STAMPEDE』が夏休みの映画館を賑わせている。2019年に公開された数多くの人気シリーズなどを抑え初日動員数は今年1位のスマッシュヒットを記録しており、最終的な興行収入もシリーズ最高を更新する勢いだ。近年の『ONE PIECE』の劇場版作品は評価も高く、見応えがある作品が続いている。この高評価の一端を担っているのは、原作者の尾田栄一郎が監修や総合プロデューサーとして作品制作で大きな存在感を発揮していることが大きいだろう。今回は、批判されがちな漫画原作映画に対して、原作者がどのようなアプローチをして映画をより面白いものにするために尽力しているのか注目していきたい。

 漫画原作の映画の場合、多くのファンが気にしがちなのは原作にどれだけ忠実に再現するのか? という問題だ。原作のファンとしては魅力を一切損なうことなくそのまま映像化することを望む声をあげてしまいがちだが、漫画で最適な表現となっている原作に対して2時間前後の映画で物語の流れを完全に再現したり、魅力をそのまま詰め込むことは難しい。そのため物語の一部を削ってしまったり、原作を知らない方向けに過剰に説明することによって魅力を損なってしまうこともある。

 『ONE PIECE』も原作との整合性という問題を抱えている。尾田栄一郎が総合演出などの制作スタッフとして名を連ねた『ONE PIECE FILM STRONG WORLD』以降の敵キャラクターに注目してみても、海賊王ゴールドロジャーのライバルだった金獅子のシキ、元海軍大将のゼットなどの当時のルフィでは到底太刀打ちできないと思われるほどの大物が相手であり、原作にも重大な影響を及ぼすであろう設定でもあるキャラクター達であった。また『ONE PIECE』は海賊の物語であり『ONE PIECR FILM Z』のように、敵である海軍をメインとして物語を構築することはファンの反感を買う可能性もある。

 本来は映画版というのはあくまでもスピンオフであり、原作しか読んでいないファンも大勢いるであろうことから、本筋の物語に大きな影響を与えないことが求められる。『ONE PIECE STAMPEDE』で登場するお宝は、原作にも大きな影響を与えるものではあるが、その扱い方なども含め今後の展開に支障をきたさずに終えるものだった。『ONE PIECE』の映画の場合は原作の世界観や展開に影響を与えかねないほどの重要な設定やキャラクターを惜しげもなく使っており、またお馴染みの麦わらの一味以外に焦点を当てても高い支持を得ているのも、原作者が主要な制作スタッフとして参加していることが大きいだろう。

 ただしあくまでもスピンオフのような扱いのために今作の『ONE PIECE STAMPEDE』も原作の流れや設定を考えると、違和感がどうしても生まれてしまう。海賊万博に参加するために多くの海賊や海軍が集まったという設定であるが、麦わらの一味が全員揃っており今作に登場する海賊や海軍が自由に動き回れる時期は原作のどの時期を考えても存在しないように思われる。

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