『なつぞら』脚本家・大森寿美男が明かす最終回に向けての構想 “開拓者精神”をどう描くのか

『なつぞら』朝ドラ王道パターンを貫く意義

 4月から放送が始まったNHK連続テレビ小説『なつぞら』も終盤にさしかかっている。

 北海道の十勝で育ったなつ(広瀬すず)は、当時、草創期だった漫画映画の世界を夢見て上京。東洋動画で作画監督というポジションまで登りつめ、今はアニメーターの先輩である麻子(貫地谷しほり)が立ち上げたマコプロダクションにて、かつての仲間たちとともに『大草原の少女ソラ』を制作中だ。

 『大草原の少女ソラ』は、海外の児童文学である『大草原の小さな家』を原案に、舞台をなつが育った十勝に置き換え、開拓者一家の生き様を描くもの。残り2週間を切った本作のラストスパートとして、なつたちの『大草原の少女ソラ』制作に焦点を当てた意図とは何だろうか。脚本を手がけた大森寿美男は、こう説明する。

「主人公が自分の生い立ちを題材にしたものを最後に作るという展開は、なんだか朝ドラの王道的なパターンのような気がして最初はあまり気が進まなかったんです。でも、今回は王道を最後まで貫こうと。なつの物語をそのままアニメにするわけではないので、その展開もいいなと思いました」

 主人公の物語をアニメーションで描く。作中では、なつの夫であり演出家でもある坂場(中川大志)は、「リアルな日常を描くような話を、アニメーションで表現したいと思ってる」と『大草原の少女ソラ』の企画を説明する。

 リアルな日常を描くために、大森は実際に参考にした作品があったという。

「いわゆる昭和のテレビアニメにおけるエポックメイキングな作品である『アルプスの少女ハイジ』のようなものを作ろうと考えていました。かつての世界名作劇場で放送していたようなものを、坂場となつが一緒に作るという展開にしたかったんです」

 世界名作劇場といえば、かつて日曜日の19時30分から放送されていたテレビアニメシリーズとして知られ、『フランダースの犬』や『母をたずねて三千里』など、現代に残る名作アニメーションを送り出した放送枠だ。

 ここで放送された『アルプスの少女ハイジ』は、高畑勲が演出、宮崎駿がレイアウト、小田部羊一が作画監督を務めた、日本のアニメーション史を語る上では外せない作品だ。のちにスタジオジブリを背負うことになる2人の才能が手がけた作品というだけでなく、宮崎駿が務めたレイアウトという役職は、この作品で初めて用いられ、絵コンテから直接背景と原画を起こすのが一般的であったアニメーション制作現場に革新をもたらした。

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