『結婚できない男』『時効警察』『おっさんずラブ』 続編ドラマの“カップル問題”を考える

続編ドラマのカップル問題を考える

 この夏、10月クールドラマのラインナップが発表され始めた頃、筆者を含むF2層(35~49歳の女性)のドラマファンの間に衝撃が走った。2006年に放送されたラブコメディの名作『結婚できない男』の13年ぶりの続編『まだ結婚できない男』(カンテレ・フジテレビ系)が始まる。それはめでたい。阿部寛が演じる偏屈でデリカシーもないがなぜか憎めない男・桑野信介にまた会えるのは大歓迎だ。ところが、恋の相手役は前作の夏川結衣ではなく、吉田羊や稲森いずみ、深川麻衣になるという。忘れもしない前作の最終回で、桑野は医師の夏美(夏川)に「僕はあなたのことを好きなんじゃないかな」と不器用すぎる告白をし、夏美は目に涙を浮かべてその言葉を受けた。その後、またすれちがいがあったものの、最後は夏美が桑野のマンションに行くというハッピーエンドで幕を閉じた。そのはずだった。それなのに、13年後を描く新作では夏美と結婚も交際もしていない……!? 

 公式サイトの人物紹介で桑野の欄には「夏美と付き合ったものの、愛想を尽かされて別れた」とある。そうだったのか~。残念な成り行きだけれど、桑野はかなりの変人だから、納得できる筋書きではある。前作で40歳だった桑野は53歳に。相変わらず独身でひとり暮らし。建築士の仕事は順調でマンションを所有し、特に生活に不自由はしていない。前作で「私が死んだら、あなたのことを真剣に心配してくれる人は誰もいなくなる(だから、結婚しろの意)」と言った母親(草笛光子)もちゃっかり健在だ。ただ、人生100年時代の到来によって「残り50年の人生をひとりで過ごすのか」と考えていく展開になるという。

『おっさんずラブ-in the sky-』(c)テレビ朝日

 その桑野のそばに夏美がいないことに悲しい気分になってしまうのは、古参のファンのみなのか。ここでリンクするのは、秋ドラマで最後の発表となった『おっさんずラブ』シリーズ第2弾、『おっさんずラブ-in the sky-』(11月2日土曜スタート、テレビ朝日系)である。連続ドラマ版、映画版では不動産会社に勤める主人公・春田(田中圭)の恋の相手は後輩の牧(林遣都)だったが、新作では設定変更に。春田は同姓同名だが別人であり、勤務先は航空会社に変わるという。恋の相手になりそうな新キャストとしては、千葉雄大と戸次重幸が発表され、多くのファンに衝撃を与えた。『結婚できない男』が13年ぶりの再開でもショックだったのに、前作の続きを描いた劇場版が公開中のタイミングで違うロマンスが始まってしまうとは……。ポジティブに考えれば、前作の世界線で春田と牧はカップルであり続けているはずなのだが、生身の人間が同じ名前のキャラを演じる以上、なかなか別物とは割り切れない。

 ここで、改めて考えてみたい。「恋愛ドラマで結ばれたはずのカップルが続編では別れてしまっている問題」を。

 主に合コン形式恋愛が繰り広げられたトレンディドラマ以前を振り返ると、最初にそのショックを与えたのは1986年放送、『男女7人夏物語』(TBS系)だったように思う。大竹しのぶが演じるライターの桃子がアメリカでチャンスをつかもうとし、ようやく恋人になったばかりの良介(明石家さんま)は「待っていてやる」と彼女を送り出した。しかし、続編の『男女7人秋物語』(TBS系)で2人はあっさり別れていて、帰国した桃子には新しい彼氏がいるのだ。「そんなのアリ? 今まで2人を応援してきた私たちの気持ちはどうなるの」と当時、女子トークでも話題になったことを憶えている。結局、良介と桃子は周囲に多大な迷惑をかけながら元サヤに収まるのだが、続編で一度、どん底に落とされたという記憶は強烈だ。他にも『ナースのお仕事』(フジテレビ系)シリーズのヒロイン、いずみ(観月ありさ)がシーズンごとに違う研修医と付き合ったという例もあり、カップル解消パターンはなくはないのだが、やはりそのたびに少なくないファンががっかりしてきた。

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