『シャーロック』は今までにない異色のホームズ作品に “ワトソン”岩田剛典の設定が今後のカギ?

『シャーロック』、異色のホームズ作品に

 昨年の4月クールに放送された『モンテ・クリスト伯 ー華麗なる復讐ー』(フジテレビ系)と同じく、西谷弘演出&主演ディーン・フジオカの組み合わせで、7日に放送が開始されたフジテレビ系列月9ドラマ『シャーロック:アントールド・ストーリーズ』。さらにプロデューサーの太田大とディーンの組み合わせでは前述の『モンテ・クリスト伯』に加えて今年1月に放送された『レ・ミゼラブル 終わりなき旅路』もあるだけに、名作海外文学を現代日本に置き換えてリメイク(これは“再構築”という言葉の方が相応しいだろうか)する上でディーンという役者はぴったりということなのだろうか。

 いずれにしても、アーサー・コナン・ドイルの『シャーロック・ホームズ』シリーズといえば、これまで幾度となく映像化されているミステリー作品の定番中の定番だ。比較的最近でいえばロバート・ダウニー・Jr.がホームズを、ジュード・ロウがワトソンを演じた正統派の映画版が大ヒットし、物語の舞台を現代に置き換えたBBC製作のドラマ版『SHERLOCK』ではベネディクト・カンバーバッチがホームズを演じ、マーティン・フリーマンがワトソンを演じ日本でも絶大な人気を博した。今回の『シャーロック』は、現代の東京を舞台としている。そうなると、昨年HuluとHBOアジアの共同製作で作られた、ホームズとワトソンを女性に置き換えた竹内結子と貫地谷しほりの『ミス・シャーロック』というのも必然的に比較対象として挙がるわけだ。

 しかしながら第1話を観た印象としては、『SHERLOCK』とも『ミス・シャーロック』とも毛色がまったく異なる作品になっているではないか(若干前者を意識しているような気配も漂ってはいたが)。その理由としてまず挙げられるのは、物語の導入として必要な語り部であるワトソン(本作では岩田剛典が演じる若宮がそれに当たる)のバックグラウンドが大きく異なっているという点だ。原作では軍医であったワトソン。その設定を踏襲した『SHERLOCK』と、現代日本的に医療ボランティアでシリアに派遣されていたと脚色した『ミス・シャーロック』に対し、本作では不正をして医師になったことに罪悪感を抱える精神科医として描かれる。この“精神科医”という設定は、今後のドラマの展開に何かしら機能を果たすような予感がしてならない。

 そしてホームズ=誉獅子雄(ディーン・フジオカ)とワトソン=若宮潤一(岩田剛典)の出会いのきっかけとなる事件を掘り下げていくという今回のストーリーの都合もあってか、ミステリーとしては今ひとつ盛り上がりに欠けることは否めない。それでも獅子雄というキャラクターが放つどことない怪しさや、ユーモラスな雰囲気などエンターテインメント性を重視した作品であると考えれば何ら問題はないだろう。また、コナン・ドイルの『六つのナポレオン』に登場する「パセリがバターに沈んだ深さ」という言葉をヒントにした点であったり、謎を解くためにバイオリンを演奏する獅子雄の姿など、原作へのオマージュをこれまでの映像化とは違い、小ネタのひとつのような形で捧げているところは見逃せない部分だ。

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