『マイ・フーリッシュ・ハート』主演スティーヴ・ウォール、チェット・ベイカーについて語る

S・ウォール、C・ベイカーを語る

 11月8日公開の映画『マイ・フーリッシュ・ハート』より、チェット・ベイカーを演じたスティーヴ・ウォールのインタビューが公開された。

 本作は、ベイカーの知られざる最期の数日間を描いたもの。1950年代のジャズ・シーンに彗星のごとく現れ、トランペットの清冽な音色と中性的な歌声によって、マイルス・デイヴィスを凌ぐほどの人気を獲得したチェット・ベイカー。ウエストコースト・ジャズのスーパースターから、悲しき孤独なジャンキーへと堕ちていったベイカーは、その極端に起伏の激しい人生そのものまで伝説化されてきたが、彼が58歳の時にオランダ・アムステルダムのホテルから転落死した際の真相は、未だ謎のベールに覆われている。

 リサーチに3年の歳月を費やした、オランダの新鋭、ロルフ・ヴァン・アイク監督が撮り上げ、ウォールが主演を務める。ジャズの歴史に輝かしい功績を残したベイカーは、なぜ異国オランダの道ばたで無残に息絶えたのか……。

 アイルランドの伝説的ロックバンド「The Walls」「The Stunning」のボーカルとしても活躍する俳優・ミュージシャンのウォール。ベイカーを演じることについて「私はチェット・ベイカーのアルバムをいくつか持っていて、彼の音楽を聴いていたんです。この役の準備のために、チェットの本やインタビュー、オンラインにあがっているコンサート映像など、自分で見つけられる彼についての情報はすべてリサーチしました。彼の声は独特で、歌う声も話す声も私とは全く違ったから、まずは声とアクセントを学ぶのに多くの時間を使いました。彼の声はハイピッチで、とても鼻声で、対して私の声はもっとバリトンなんです。声のピッチを変えるために、鼻にコットンの詰め物をして、鼻声を作ったりもしました(笑)。彼のことを知りアプローチするためのプロセスは本当に楽しかったです」と語る。

 また、トランペットの演奏経験については「トランペットは一度も演奏したことがなかったので、撮影中はずっとレッスンを受けていました。実際に演奏しているように見せるため、指使いとブレスをひたすら学びました。とにかく本物に見えるようにしたかったから、プロのトランペッターが映画を見ても私が実際に演奏しているように見えると思います。トランペットの3つのバルブのどこを押さえるかを書き込んだチャートシステムを作ったんだけど、チェットは目を閉じて演奏するから、撮影時には細めた目でそれを見なくてはいけなかったから、それにはとても苦労しました(笑)。私自身ミュージシャンで、メロディーを覚えることには慣れていたから、それは大きな助けになったと思っています」とコメント。

 さらに、実際にベイカーを演じてみて「チェットは、やはり音楽の天才だと思っています。ある意味、彼は多くの音楽を記憶にすることに貢献していると思います。彼のトランペット演奏は卓越しているし、それは、まるで彼の声のようです。しかしながら、彼のドラッグ使用と最終的にはヘビーな中毒で、彼の人生と彼に近しい人々の人生を地獄にしてしまった。当時、ジャズ・ミュージシャンたちの間でヘロイン使用は流行していて、沢山の人が亡くなったけれど、何人かはそれをやめることが出来ていた。チェットは何度もドラッグを辞めようとしていたけど、たぶんサポートが十分ではなかったんだと思う。彼はいろんな意味で不完全な人間だったけど、音楽があるから愛されてもいた。だけど、ドラッグ中毒者は、いつもまわりに身勝手な行動をとってしまう。チェットは彼の伝説的なその立場のせいで、他の人に対して優位に振舞ったり、処罰を免れたりできていたのだと思います」とベイカーへの思いを述べた。

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■公開情報
『マイ・フーリッシュ・ハート』
11月8日(金) ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
監督・脚本:ロルフ・ヴァン・アイク
出演:スティーヴ・ウォール、ハイス・ナバー、レイモンド・ティリー
配給:ブロードメディア・スタジオ
2018年/オランダ/原題:My Foolish Heart/87分/シネマスコープ/PG12
公式サイト:my-foolish-heart.com

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