初登場4位『ジェミニマン』 今や中国マネーはハリウッド・アクションの生命維持装置?

アクション映画大作には中国マネーが必要?

 『ジョーカー』が土日2日間で動員18万人、興収2億6900万円をあげて貫禄の4週連続1位を達成した。アメリカでも『マレフィセント2』に1週だけ首位を明け渡した後、先週は1位(通算3週目)に返り咲くという異例の動きをみせていて、未だ世界席巻中の『ジョーカー』旋風は止まる気配がない。監督のトッド・フィリップス、主演のホアキン・フェニックスともに具体的には一切動いていないと明言していた続編についても、さすがにここにきて噂が立ち始めているが、すべては監督&主演の2人次第といったところだろう。

 今回は4位に初登場した『ジェミニマン』に焦点を当てたい。先週末土日2日間の動員は10万人、興収は1億4000万円。初日から3日間の動員は13万4000人、興収は1億8500万円。主演のウィル・スミス、監督のアン・リー、 プロデューサーのジェリー・ブラッカイマーをプロモーションのために来日させた配給サイドからすれば大いに物足りない成績だろうが、ウィル・スミスの近年の単独主演作品やアン・リーの過去のアクション作品(『グリーン・デスティニー』や『ハルク』)の成績をふまえれば、作品で何か特別なことでも起こっていない限り、これは予想できた結果だった。

 『ジェミニマン』はアメリカでも初登場3位、期待された中国でも初登場4位と奮わなかったため、今年公開されたハリウッド大作の中でも際立って大きな赤字を出してしまう作品になるとの報道がされている。中国で期待されていたのは、本作に中国のアリババ・ピクチャーズが出資をしているからだ(アクション作品を得意としているわけではないアン・リー監督の起用にも、少なからず影響しているはず)。中国企業出資のハリウッド映画の増加は今に始まったことではないが、これまでの作品によくあった「アメリカのマーケットでの興行的失敗を中国のマーケットでリクープする」という流れが、ここにきて機能しなくなってきているのは気になるところだ。

 ハリウッド映画への中国マネーの流入については、過去の作品のクオリティの水準も含めて賛否が分かれるところだろうが、重要なのはもはや『ジェミニマン』のようなオリジナルのアクション映画がそれなしでは成り立たちにくくなっていること。監督、役者、脚本家、プロデューサーの立場を問わず映画関係者の誰もが指摘するように、近年のハリウッドでは人気シリーズ作品かスーパーヒーロー作品以外のエンターテインメント作品の企画が極端に通りにくくなっている。そんな中で、本作に出資しているアリババ・ピクチャーズ、及び本作の製作会社であるスカイダンス・プロダクション(本社はアメリカだが中国企業との連携に強い。現在は中国のテンセントが主要株主となっている)は、『アウトロー』(『ジャック・リーチャー』シリーズ)、『エージェント:ライアン』(『ジャック・ライアン』シリーズのリブート)、『ジオストーム』などのアクション大作を手がけてきた。また、シリーズ作品に目を向けても、『ミッション:インポッシブル』シリーズ、『ターミネーター』シリーズ、『トップ・ガン』シリーズといった80〜90年代生まれの人気シリーズは、現在スカイダンス・プロダクションが権利を所有している。

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