『グランメゾン東京』木村拓哉の“らしさ”全開 同世代とともに夢を追う「キムタク」の姿

『グランメゾン東京』を味わい深くする仲間

 新店のオープンに向けてメニュー開発に心血を注ぐ尾花(木村拓哉)たち。メインディッシュを完成させるため試行錯誤を繰り返す中、フードライターの久住栞奈(中村アン)の紹介でジビエ料理のコンクールに参加することに。そこには丹後(尾上菊之助)の「gaku」もエントリーしており、ライバルとの前哨戦の様相を呈する。

 『グランメゾン東京』(TBS系)第3話は鹿肉をめぐる冒険がテーマ。だが「gaku」のオーナー・江藤(手塚とおる)が良質な鹿肉を買い占めたことで、食材を求めて尾花は倫子(鈴木京香)とともに食材ハンター・峰岸(石丸幹二)の元へ向かう。「自分の都合だけで肉を欲しがるような奴に俺のジビエは譲れない」と言う峰岸を説得するために、相沢(及川光博)も加わって最上のジビエ料理を探求する。肉の調理法からコンソメづくりまであらゆる技法、アイデアを試して最後に行き着いたのは、一見相反するかのような組み合わせだった。

 第1話から順調な滑り出しを見せた『グランメゾン東京』に対して、木村の演技と実力派をそろえたキャスティングを成功要因として指摘する声がある。ふっきれたような“らしさ”全開の木村の演技が従来のファンを喜ばせ、鈴木京香らベテランとの相乗効果でドラマのクオリティを担保しているという見解には筆者も同意だ。その上で、木村が従来のイメージに立ち返るような演技をしている理由として、他人のプロデュースに委ねた点が大きいと考えられる。

 俳優・木村拓哉の最盛期は、1996年の『ロングバケーション』(フジテレビ系)から2000年作『ビューティフルライフ』(TBS系)を経て、2001年作『HERO』(フジテレビ系)に至る期間で、その後は国民的人気キャラクター「キムタク」を変奏しながら時代の求めるヒーロー像を提示してきた。

 2010年代以降、40代に入ってからの木村は、それまでに築かれたイメージを脱却することに力点が置かれてきた。時代の閉塞感を打ち破るようなヒーロー像が次第に既視感をまとったものになり、演じるキャラクターもアンドロイド(TBS系『安堂ロイド〜A.I. knows LOVE?〜』)やサラリーマン(テレビ朝日系『アイムホーム』)、ボディガード(テレビ朝日系『BG〜身辺警護人〜』)など、憧れのヒーローから距離のあるものに変わっていく。いま見返すと試行錯誤の中に新境地が見て取れるが、それでも「何を演じても“キムタク”」と言われてしまう中で、さらにSMAP解散の余波も加わり難しい状況が続いていた。

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