『いだてん』阿部サダヲの前に立ちはだかる浅野忠信 「俺のオリンピック」に込められた政治の思い

『いだてん』政治が語る五輪のあるべき姿

 11月3日に放送された『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』(NHK総合)第41回「おれについてこい!」。田畑政治(阿部サダヲ)が語った「オリンピックのあるべき姿」は印象に残るものだった。

 まず紹介したいのが、政治と“岩ちん”こと岩田幸彰(松坂桃李)とのやりとりだ。政治は自身の右腕として岩田に絶対の信頼を寄せている。政治が「俺のオリンピック!」と一声あげれば、岩田は即座に国立競技場の模型を用意する。亀倉雄策(前野健太)がオリンピックの総合デザイン顧問を断りかけたときも、政治の「岩ちん!」という一言で、即座にフォローに入る岩田。阿吽の呼吸で仕事を全うする政治と岩田の関係性を、阿部と松坂はリズミカルなやりとりで表現する。バー「ローズ」で明かされた岩田“画伯”のくだりでは、岩田にデザインの才能があると信じている政治のキラキラとした目と、真実を打ち明けられず、マリー(薬師丸ひろ子)に助けを求める岩田の表情が面白い。

 政治は岩田を1年間ローマに派遣し、ローマオリンピックの視察を託した。帰国した岩田はローマオリンピックでの熱狂と、東京オリンピックの財源課題を解決する糸口として「トトカルチョ」というスポーツくじを紹介する。

 だが、日本政府は政治らの提案を好ましく思わなかった。政治は政府関係者に対しても歯に衣着せぬ発言をするが、オリンピック担当大臣・川島正次郎(浅野忠信)が立ちはだかる。ことあるごとに「俺のオリンピック」と口にしていた政治。川島はそれを指摘する。しかし政治は決してオリンピックの計画を独断場で進めたいわけでも、成果を独り占めしたいわけでもない。政治は大物政治家たちに物怖じすることなく、「日本のオリンピック」「国民のオリンピック」と発した川島らにこう言った。

「だったら渋滞なんとかしてくれよ。国民の生活、もっと豊かにしてくれよ。国民の一人一人がさ、“俺のオリンピック”だって思えるように盛り上げてくれよ、先生方!」

 阿部の勢いのある台詞回しが心に刺さる。政治が発した「俺の」は、国民一人一人が誇りをもって思えるようにするための責任感からくる言葉なのだ。皮肉なことに、「日本の」「国民の」と発した政治家たちこそ、オリンピックを政治利用、私物化しようとしているように見える。

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