『マチネの終わりに』、鈍い出足 2019年は大人向け日本映画の「受難の年」?

2019年は大人向け日本映画「受難の年」?

 4週連続で独走状態を続けてきた『ジョーカー』に土をつけたのは、『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』だった。土日2日間の動員は18万5000人、興収は2億7200万円。これは、2年前の2017年11月に公開されて興収22億円を記録した前作との興収比で約148%という成績。初日金曜日から祝日の11月4日までの4日間の累計でも動員36万人、興収5億円を突破するスタートをきった。同じワーナー配給作品、そしてある意味で同じクラウン(ピエロ)ものでもある『ジョーカー』の想定を超える大ヒットの影響を被るかと予想をしていたが、フタを開けてみれば好調なスタートとなった。10代、20代の観客が中心との報告もあり、同じR15指定作品でありながら『ジョーカー』よりも少し低めの年齢層における支持が高いことが功を奏したのかもしれない。

 今回取り上げるのは3位に初登場した『マチネの終わりに』。監督は『容疑者Xの献身』、『アンダルシア 女神の報復』、『任侠ヘルパー』、『真夏の方程式』、『昼顔』など数々の長編映画でヒットを飛ばしてきただけでなく、日本のテレビドラマから派生した映画としては群を抜いた演出手腕を持つ西谷弘。主演は2003年のテレビドラマ『美女か野獣』以来、これまで西谷監督と何度も組んできた福山雅治。原作は50万部を記録(2019年9月現在)する平野啓一郎のベストセラー。テーマは『昼顔』にも通じる大人の恋愛ドラマ。ということで、好スタートが期待されたが、土日2日間の動員9万5000人、興収は1億2900万円という成績。映画作品としては、西谷弘監督の前作となる2017年の『昼顔』のオープニング2日間の約44%、福山雅治主演作の前作(チャン・ハンユーとのダブル主演作『マンハント』を除く)となる2017年の『三度目の殺人』のオープニング2日間の約55%。両作品とも公開当時は東宝配給作品の公開日がまだ土曜日だったことを鑑みても、鈍い出足と言わざるを得ない。

 『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』が週末型の興行であるのに対して、『マチネの終わりに』は『昼顔』同様に平日の興行に強く、レディースデイの11月6日(水)にはデイリーでトップに立つなど、まだ口コミやソーシャルメディアでの評判次第で広がる可能性はある。しかし、特に今秋は同じ東宝配給の石川慶監督作品『蜜蜂と遠雷』(クラシックミュージック映画としての側面があるところも『マチネの終わりに』と共通している)、先週末同じタイミングで公開されて8位に初登場した東映配給の平山秀幸監督作品『閉鎖病棟―それぞれの朝―』、KADOKAWA配給の瀬々敬久監督作品『楽園』、フランスとの合作ではあるがGAGA配給の是枝裕和監督作品『真実』と、いずれも実力の伴った監督による大人向けの作品にして、実際にそれぞれ非常に見応えのある実写日本映画がどれも興行的に苦戦しているのが気になるところだ。

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