『俺の話は長い』生田斗真の屁理屈が伝える、隠れたメッセージ 小池栄子との会話が物語の核に?

『俺の話は長い』生田斗真の名言

 前半のエピソード『銀杏と爪切り』の中盤、春海(清原果耶)の志望校の話題と、光司(安田顕)が陸(水沢林太郎)と連絡を取り合っているのを自分だけが知らなかったことにショックを受ける綾子(小池栄子)。その直後にシーンで房枝(原田美枝子)は光司に吹き矢を教えながら、春海が小学校の時の卒業文集に書いた将来の夢について話し、「家族がひとつ屋根の下で暮らすのって簡単なことじゃないのね」とつぶやく。

 9日に放送された日本テレビ系列土曜ドラマ『俺の話は長い』第5話は、これまでのエピソードに一貫していた、いかにして満(生田斗真)に就職させて家から追い出すかという大テーマから離れ、より純然と、古典的でありながらもにくめない“家族”の様子を映し出した好エピソードとなったのではないだろうか。前半の『銀杏と爪切り』では家族の中で疎外感を感じながらも、普段通り話しかけてくる家族によっていつものペースを取り戻し、後半の『シャンパンと合い鍵』では満のペースに乗せられまいと結託するものの、結局我慢できずにいつもの感じに戻る。いずれも綾子の表情や態度が、すべてを物語っていくわけだ。

 そんな中で最も興味深いのは、居間で銀杏の殻を割っている満の後ろで綾子が爪を切り、「夜に爪を切ると親の死に目に会えない」という迷信について語り出すところから始まる姉弟のシーン。その中で満は、綾子が“親を欺く立場”から“欺かれる立場”になったんだと語り、子供時代の思い出に花を咲かせる。綾子が中学生の頃にデートで映画を観に行こうとしたら父親に止められそうになり、満を連れて観に行くことにして、友達と遊んで待っていた満にデート帰りの綾子が映画のあらすじや主人公の行動などを叩き込んだというのだ。

 ほとんど他愛もない会話と、途中から加わる春海を含めた3人の表情だけで、すこしギクシャクした空気があっても家族は簡単に元に戻れるのだと示すこのシーンだが、他にも様々なことが凝縮されているように思える。まず、その話題にあがる映画はロバート・ゼメキス監督のアカデミー賞受賞作『フォレスト・ガンプ/一期一会』で、日本公開は95年。今まで満の年齢ばかりフィーチャーされてあまり意識していなかったが、綾子の設定は37歳とのことで「中学生の時に〜」という点で相違がない。つまり満とは6歳離れているので、当時から綾子は小学校低学年の弟をダシに使ってまで自分のしたいことを押し通そうとする性格だったことがわかる。

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