『チャンネルはそのまま!』が傑作になった理由 芳根京子キャリア最高の好演がもたらすユニークさ

『チャンネルはそのまま!』傑作の理由

 北海道のローカルテレビ局HTBの開局50周年を記念して製作されたドラマ『チャンネルはそのまま!』が、2019年日本民間放送連盟賞のテレビ部門でグランプリを受賞したことを受け、1月5日からテレビ朝日をはじめ全国各局で放送される。これまでHTBを皮切りに全国各地のローカル局を転々としながら放送されており、それに加えてNetflixでのグローバル配信と、まさに娯楽の多様化の中でテレビドラマが置かれている複雑な現状を体現してきたかのような流れを歩んできた本作。この機会に改めて、その作品としての魅力をまとめてみたい。

 昨年夏クールにTBS系列でドラマ化された『Heaven? ご苦楽レストラン』で知られる漫画家・佐々木倫子の同名コミックを原作にした本作の舞台は、HTBを彷彿とさせる(現に社屋の外観は南平岸にある旧社屋が使われている)北海道のご当地テレビ局「北海道ホシテレビ」。そこに何年かぶりの“バカ枠”として採用され、報道部に配属された新人・雪丸花子を中心に、彼女の世話係(通称:バカ係)を任された山根をはじめとした同期入社の面々がそれぞれの仕事で直面する悩みや、ライバルテレビ局からの嫌がらせなど、テレビ局のドタバタとした内幕がコミカルに映し出されていく。

 大泉洋をはじめとしたTEAM NACSメンバーの総出演や、個性豊かなキャラクターたちが見せるユニークな掛け合いなど、“北海道エンターテインメント”色をいかんなく押し出した雰囲気に、総監督を務める本広克行の代表作である『踊る大捜査線』を彷彿とさせるような小さなトラブルが大きな事件へと発展していく展開。さらにはテレビ局という特殊な職業の舞台裏から、『同期のサクラ』さながらの同期入社の仲間たちの結束のドラマなど、全5話という比較的短い中に、ありとあらゆる面白みが凝縮された作品というだけで、その贅沢さから極めて高く評価できよう。そして最終話に待ち受けている、それまでののほほんとしたコメディ展開とは打って変わったスリリングな展開は、近年のドラマの中でもまさに出色の出来栄えである。

 その本作をさらに無二の傑作へと押し上げているのは、やはり主人公・雪丸花子を演じている芳根京子の演技に他ならないだろう。NHKの朝ドラ『べっぴんさん』で全国的な知名度を獲得して以後、月9ドラマや時代劇から、アニメ声優など様々な役柄に挑戦してきた彼女ではあるが、その真骨頂はコメディ作品で発揮されるのだと改めて感じる。予想外の動きで画面内を動き回り、コミカルな雰囲気を補うように登場する文字情報に持っていかれることなく自身の表情だけで笑いを生み出し、コメディに欠かすことのできない“間”を完璧に掌握する。今後芳根京子という女優の代表作として真っ先に挙げられてもおかしくないほど、キャリア最高の爆発的な好演といっても過言ではないだろう。

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