イーロン・マスクもページ削除 拡大するフェイスブック情報流出騒動のポイントを読む

拡大するFacebookページの削除運動

 データ企業ケンブリッジ・アナリティカによるFacebookユーザー5000万人のデータ不正入手とその利用が、ニューヨーク・タイムズ紙ロンドン・オブザーバー紙によるスクープを皮切りに、瞬く間に大西洋を越えてアメリカとイギリスで大きな騒動となった。データを用いて各種の政治キャンペーンのコンサルティングをしてきたケンブリッジ・アナリティカだが、今回の騒動が大きなものになったのは三つの要素が関係している。Facebookによるユーザーのプライバシー軽視、ブレグジットとアメリカ大統領選という近年の二大政治イベントへの影響だ。

 それに加えて、タイムズ紙とオブザーバー紙のスクープが世に出た数日後に、英国のチャンネル4が隠しカメラで撮影したケンブリッジ・アナリティカCEOとの面談の映像を放送した。潜入取材だと気付いていないCEOの口から、賄賂や売春婦を用いた、どんな手段も厭わない彼らのキャンペーン方法を自慢する言葉が発された。こういったセンセーショナルな映像と一緒にスティーブ・バノン、ドナルド・トランプといった名前がニュースに流れ、人々の注目をさらに集めている。

Facebookによるユーザーのプライバシー軽視

 既に多くのメディアによって報道されているが、ケンブリッジ・アナリティカが5000万人のFacebookユーザーのデータを入手した方法は不正なものであった。この経緯、実際にデータ漏洩の被害にあった人数、そしてそれに対応したFacebookに対する罰金を決めるためにアメリカ連邦取引委員会が調査を行っている。Facebookから不正に入手されたデータだったのであれば、なぜ#DeleteFacebook(#Facebookを削除しろ)と多くの人がFacebookページを削除するボイコット運動に発展しているのか。イーロン・マスクもこの流れでスペースXやテスラ・モーターズのFacebookページを削除している。

 Facebookでデータ収集を行ったのはケンブリッジ・アナリティカが依頼したGlobal Science Researchという会社が開発したアプリだ。このアプリによってなんとユーザーだけでなく、構造的なループホールを使ってユーザーの友人たちの情報も収集されてしまった。しかしこれが行われた2014年の当時は、こういった情報収集はFacebookのポリシーに反するものではなかった。ユーザーがアプリの通告に「承認する」をクリックして彼ら(とループホールを通して彼らの友人の)データを渡したにすぎない。

 しかしFacebook上で集めた情報を他の会社に売ることは許されていなかった。Global Science Researchがケンブリッジ・アナリティカに5000万人のユーザー情報を売ったことをFacebookは2015年に知る。そう、Facebookは2015年の時点に知っていたのにもかかわらず、ユーザーに何の注意を喚起することもしなかったのだ。ここが人々の大きな怒りをかっている。情報収集に使われた性格診断のアプリはその年、Facebookから削除されたが、ケンブリッジ・アナリティカもケンブリッジ・アナリティカをダミー会社のように使っているSCLグループもFacebookから停止処分は受けていない。

 そして2年以上がたち、メディアが告発する形で表に出てやっと、Facebookは5000万人のユーザーデータの漏洩を認め、CEOのザッカーバーグが謝罪するに至った。この騒動で、Facebookがユーザーのプライバシーに対する軽視が明るみになった形だ。Facebookで働くスタッフの一人は「ユーザーを守る側の仕事を担当しているスタッフは、会社にお金を生む仕事をしているスタッフと苦しいバトルをしなければいけない」という内部事情をニューヨーク・タイムズに語っている。彼らのビジネスモデルから来るこういった社内カルチャーだけでなく、友人のデータもアプリによって抜き取られてしまうようなループホールがあったこと、不正に情報の受け渡しがされたことを知った後のユーザーたちに対する説明の欠如や関係者たちの対応、といったことが組み合わさって「Facebookに信頼してデータを預けられない」とボイコット運動になっている。

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