「SNS中毒」「スマホ依存」「ゲーム障害」への対策は世界中の課題に デジタルウェルネスの重要性と現状

デジタルウェルネスの重要性

 ITが人々に与える悪影響についての議論が昨今、大いに盛んになっている。いわゆる、「IT中毒」「インターネット依存」「SNS中毒」「スマホ依存」と呼ばれるものだ。今年に入ってから、AppleやGoogleなどの大手が、その対策となる案を発表している。

 Appleは6月に開かれた、開発者向けイベント『WWDC2018』で、iOS12の新機能として「スクリーンタイム」をリリースすることを発表した。「スクリーンタイム」は、アプリの使用やWebサイトの閲覧に費やした時間や頻度を教えてくれる機能だ。子どもの使用状況報告を親が受け取る設定にできるほか、親が子どもの利用時間を制限することも可能となっている。

 Appleの対応は、今年1月にAppleの大株主であるヘッジファンドのジャナ・パートナーズとカリフォルニア州教職員退職年金基金(カルスターズ)が、若い世代の「iPhone中毒」について何らかの対策を講じるように要望していたことを受けて行われたものである。

 また、Googleは5月の開発者向けイベント『I/O 2018』において、「digital wellbeing(デジタルウェルビーイング)」というキャッチワードを基にした、次期OSに搭載予定の新機能を発表した。アプリを1日に何時間使っていたかなどをチェックできる「Dashboard」、アプリの使用時間を制限できる「App Time」、すべての通知をオフにできる「Do Not Disturb」、就寝時刻に合わせて画面をグレー表示にしてくれる「Wind Down」など、どれもがスマートフォンの使いすぎを防止するための機能である。

「digital wellbeing(デジタルウェルビーイング)」を日本語に翻訳すれば「デジタルの幸福」だろうか。AppleやGoogleが発表した案には、テクノロジーへの過度な依存や中毒を危惧する考えが根底に流れている。「IT中毒」「インターネット依存」「SNS中毒」「スマホ依存」などの問題が、長い目で見れば、企業や社会にとって不利益になるとの認識が一般的になってきた証拠といえよう。これは、最近のIT業界で盛んに叫ばれている「digital wellness(デジタルウェルネス)」と、ほぼ同義である。

 他社でも同様の施策が発表されている。今年8月、10代を中心に人気を集めている動画共有サービス「TikTok」は「musical.ly」と統合。アップグレードされたアプリではユーザーがTikTok上に2時間以上滞在すると注意を促す機能を追加した。同じく8月に、Instagramがアプリの使用時間を管理できる機能を、InstagramおよびFacebookに追加することを発表している。この先、こうした流れに追従する企業はまだまだ増えていくだろう。「digital wellness(デジタルウェルネス)」は、IT業界でのトレンドと言っていい状況である。

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