マレーシアのゲーム会社は何を作っている? 『東京ゲームショウ2018』海外ブース訪問

TGS海外ブースの充実ぶり

 今年も幕張メッセにて開催された『東京ゲームショウ2018』。ビッグタイトルのブースが立ち並ぶ中で、会場には海外から多数のデベロッパーが出展していた。ひとつひとつはこじんまりとしたブースだが、韓国やマレーシア、インドネシアのように国ごとに固まって来日したり、オランダのように大使館ぐるみでパビリオンを作ったりと、個性のある展示が印象的だった。

マレーシアのブース。複数の企業が参加している

 会場内では「ニュースターズコーナー」としてまとまってブースを出していたのが、アジア・東欧・ラテン系の国々の企業。これらの国には「大手のゲームメーカー」と呼べる存在はないものの、海外のトリプルAタイトルに参加しているデベロッパーが数多く存在している。その中でも、マレーシアのクアラルンプールに本拠を置くパッション・リパブリックは相当大規模な会社だ。社員数は96人、東京ゲームショウにも過去6回ほど出展しているという。『Gears of War 4』や『Injustice』といったトリプルAタイトル100本近くに関してコンセプトアートやモデリング、アニメーションなどを手がけ、日本のタイトルでは『ダークソウル』や『ニーアオートマタ』にも参加している。

パッション・リパブリックの方々

 パッション・リパブリックではクライアントの要望に合わせ、ゲーム制作のどの部分をどう担当するかを変更する。コンセプトアーティストのSIEW HONGさんは「色々な国の仕事をしますが、特に感じるのは国ごとに求められているビジュアルに大きな差があることです。うまく説明しにくいところがあるんですが、アメリカのクライアントから求められるのはストーリー性を重視したビジュアルです。それに対して日本のクライアントはそこまでストーリーを重視しないところがありますね。アメリカだと、『もっと現実的なビジュアルにしてほしい』という感じで、ストーリーにビジュアルのディテールを合わせるよう頼まれることが多いです」と語る。ちなみにSIEWさんが今回のゲームショウで一番興味が湧いた展示はガンホーのブースで展示されていた『Ninjala』だったそう。「日本語がわからなくても、遊んでいるうちにどういうゲームなのかわかるシンプルさがすばらしいです!」と大絶賛だった。

 同じくマレーシアから参加のシラッド・コンピューティングはスマートフォン用のアプリケーションに強い会社。他国のアプリをマレーシア向けにマネタイズする業務を手がけている。現在、マレーシアでは据え置きのハードよりもスマートフォンでのゲームの方がずっと盛んであり、シラッドはそういったジャンルに強い企業だ。今回のゲームショウの目的は、自社のプラットフォームを使いたいという日本のクライアントとの商談、そして日本のゲームをマレーシアに持ち帰り、さらに他の国へと紹介することだという。

 シラッド・コンピューティング代表のRajesh Kumar Mahalingamさん(メイン写真の人物)は「現在、日本のゲームを中東に直接持ち込むのはハードルが高い状況です。しかし、マレーシアを介すれば、日本のゲームを中東へと持ち込むことはそれほど難しくありません」と語る。実際、イスラム教国であるマレーシアには中東の富裕層が大量に遊びにきており、ゲームに限らず海外の企業からは中東進出への足がかりとして注目を集めているという。「同じイスラム圏の国々に他国のゲームを紹介する」という目的ではるばる日本の見本市までやってくる……そんな人もゲームショウの会場にはいるのだ。

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