「バの音楽事情」第7回ーー月ノ美兎、ときのそら、樋口楓、ミディ、ファンソングの公式化が魅力の良曲たち

 バーチャルYouTuberの音楽シーンを楽曲紹介という形で追っていく、「バの音楽事情」第7回。バーチャルYouTuberの世界では、「ファンソングが公式化する」───という特殊な流れがある。ファンが「推し」をイメージして作った楽曲が、そのまま公式ソングとして採用されたり、本人に歌唱されたりする。

 筆者は一人の作曲家として、今まで「音楽を聴いてもらうことの難しさ」を痛感してきた。「ファンソングの公式化」という流れが、実力を持ちつつもまだまだ認知されていないクリエイターたちを、世に知らしめる架け橋になるという可能性を信じたい。今回はそういった流れを汲む楽曲を3曲と、個人的に取りあげておきたいアルバムを1枚紹介させて頂く。 

月ノ美兎 - Moon!!(作編曲:iru)

【楽曲試聴】「Moon!!」(歌:月ノ美兎)

 作曲家のiru氏による、委員長こと「月ノ美兎」のイメージソング。「最も有名になったファンソング」と言っても過言では無い。2018年3月、iru氏が「委員長の曲作ったので聴いてください」というリプライを委員長に送り、かつそれに委員長が「歌っちゃいますよ?」と反応したことが始まり。元々の音源には重音テトの仮歌が入っていたが、その後「月ノ美兎の放課後ラジオ」にて委員長本人が歌唱、これにより一気に「委員長の曲」として周知され、委員長のリアルイベント等でほぼ毎回歌われるほどに定着した。月ノ美兎バージョンの音源もまだ頒布されていないのでいつか委員長が出すCDに入る……かもしれない。この伝説の楽曲がどこまで走って行くのか楽しみである。作曲家のkz氏がTwitterに投稿したRemix ver.も必見。

ときのそら - 夢色アスタリスク(作編曲:ていくる)

【歌ってみた】夢色アスタリスク - ていくる【soraSong】

 2017年9月という早い時から活動しているバーチャルYouTuber、ときのそらの「そらとも提供曲」シリーズ第二弾。作編曲はていくる氏。ていくる氏は普段ボーカロイドを用いた楽曲を制作しており、ジャギっとしたギター・カッティングとエレクトロな音使いの融合、また間奏に入るベースサウンドが特徴的。基本的にはダークな楽曲が多い印象だが、「夢色アスタリスク」では一転、ときのそらの真っ直ぐな人格や、これからの活躍をイメージした疾走感溢れるロック・チューンとなっている。なお、2018年4月よりJOYSOUNDでの配信が開始。カラオケで歌える数少ないバーチャルYouTuber楽曲の一つである。

樋口楓 - MapleDancer(作編曲:かずぺそ)

MapleDancer【樋口楓オリジナル曲】
樋口楓イメージソング「Maple Dancer」MV

 「樋口楓イメージソング」としてボーカロイドに歌わせたものがニコニコ動画に投稿され、その後樋口楓本人が歌唱し、彼女のYouTubeチャンネルに投稿された。作編曲はかずぺそ氏。数多くある樋口楓イメージソングの中でも特に人気が高く、最近ではDJ WILDPARTYがリミックスをSoundcloudに投稿している。樋口楓の幅広い歌い方が存分に活かされており、力強いパートから消え入るようなパートまで余すところなく楽しめる名曲。なお、「樋口楓イメージソング」を投稿している人達の個人的な親交が深まりつつあるらしく、最近ではにじさんじイベント以外でも集まって遊ぶようになったとか。バーチャルYouTuberが繋いだ新たな縁に乾杯できるのはうらやましい。

ミディ - 虚構世界を愛する君へおくるうた

 2018年1月という早い時期から「作曲バーチャルYouTuber」として活動する「ミディ」の1stアルバム。界隈でもブームを巻き起こし、また樋口楓が歌唱したことでも話題になった「ハイカラ浪漫」を始め、彼女がこれまでの活動で作ってきた楽曲がほぼ全て収録されている。2018年の秋M3でCDとして頒布されたが、開場してから約1時間であっという間に完売。その後BOOTHでのダウンロード販売を行なっていたが、つい先日iTunes及びAppleMusicでの配信が開始された。インスト版の楽曲を除くと9曲収録されているのだが、その最後に収録されているのが「また明日、きっと会えるよね」───彼女の動画のEDである。この曲順からも彼女のこだわりが伝わってくる。

 今回は3曲+1枚紹介させて頂いた。「バの音楽事情」は週一回を目標に更新していく。もしバーチャルYouTuber関連の楽曲でおすすめのものがあれば、是非とも筆者のマシュマロまで情報を寄せて頂きたい。

■じーえふ
1995年生まれ。大学中退フリーター。バーチャルYouTuberに真剣。

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