宇多田ヒカルのライブをVRコンテンツでリアルに体感 スタッフに聞く“制作の裏側”

宇多田ヒカルVRコンテンツイベントレポ

 『Hikaru Utada laughter in the dark tour 2018-“光” & “誓い” - VR』公開記念、開発者によるトークイベントが1月18日、渋谷モディ1階にあるソニースクエア渋谷プロジェクトにて開催された。

 PlayStation®4用ソフトウェア(PlayStation®VR(PS VR)必須)『Hikaru Utada laughter in the dark tour 2018-“光” & “誓い” - VR』は、宇多田ヒカルによるライブステージ全体の豪華な演出を見たり、目の前で歌う姿を楽しめたり、同じ空間にいるようなライブの臨場感を3つのアングルで楽しむことができるVRコンテンツだ。製品には2018年冬に開催された宇多田ヒカルのライブツアー『Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018』から「光」(ゲームソフト『KINGDOM HEARTS』テーマソング) と「誓い」(ゲームソフト『KINGDOM HEARTS III』エンディングテーマソング)の2曲が収録されている。

 今回のイベントでは、開発に携わった映像ディレクターの竹石 渉氏、株式会社ソニー・ミュージックレーベルズの梶 望氏、ソニー・インタラクティブエンタテインメントの多田浩二氏、ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ株式会社の林亮輔氏による4名のトークが行われ、終了後には一般来場者向けの体験会も実施された。

 さて、筆者もそのVRコンテンツを実際に体験させていただいたのだが、これがなかなかの出来栄えだ。

 機材はしっかりとしているが特段重いというわけではなく、片手でも簡単に持ち上げられる程度。頭を揺らしてもまったくズレない装着感がある。ヘッドセット越しに見る視界もそこまで狭いと感じない。曲が始まると宇多田ヒカルが目の前で歌い出す。一般的にCGでは再現が困難とされる髪の毛や肌の質感がリアルなのは、これがバーチャルリアリティだからであって、グラフィックではないからである。実際に本物の宇多田ヒカルが歌っている姿を撮影した映像なのだ。

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 しかし、画像や普通のライブ映像と決定的に異なるのは、そこに映し出される「奥行き」の存在である。例えば、宇多田ヒカルのシルエットそのものは写真や2D映像でも同じように再現されるが、”厚み”や”立体感”、そしてそれによって得られる”生々しさ”はこれでしか感じ取れないVRならではの体験だ。特に、3つある視点のうち最も近距離で撮られたアングルで彼女を覗くと、終始カメラ目線で歌う宇多田ヒカルを堪能できるが「すぐそこに立っている彼女に見つめられている」ように脳が錯覚する。ドキッとするのだ。文字では伝わりづらいかもしれないが、目の前に立つ彼女に見つめられ、さらにその目に心が吸い込まれる感覚に陥る。「宇多田ヒカルがこっちを見ている!」という驚きが、歌を聴く感動とない交ぜになり得も言われぬ不思議な体験へと変化する。

 こうした新感覚の体験について、映像ディレクターの竹石氏はこう話す。

「今までミュージックビデオは曲のメッセージやアーティストの世界観を表現するものでしたが、今回難しかったのはツアーのシーンを無垢なままVRで表現するという点です。映像を撮っているんですけど、実はこれは映像じゃないなと思いながら作ってました。”体験を作っている”ような感覚です。宇多田ヒカルとは長く仕事をしてますが、そんな我々でも恥ずかしくて直視できないくらいの完成度になりました」

 また、林氏は今回使用した技術について説明してくれた。

林亮輔氏

「高品位な映像と斬新な演出手法が肝でした。会場が広い上に、真っ暗な中にスポットライトを当てるような撮影なのでカメラには解像度が必要ですし、それに加えて暗いところから明るいところまで、ダイナミックレンジを取りながらもノイズが少ない画を作らなければならない。そこで業務用の4Kカメラと最新の映画撮影用の6Kのカメラを組み合わせて撮影しました。また、監督が現場でOKやNGを出さないといけないので、PS VRのヘッドセットを被ってリアルタイムでモニタリングできるシステムを今回の撮影用に開発しました。特に監督からの要望としてカメラをクレーンに乗せて移動させるというのは、今まで我々が一度もチャレンジしたことがないことだったので、苦労したポイントです」

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