『有吉ぃぃeeeee!』総合演出が語る“テレ東らしいゲームバラエティ作り”「放送からどんどんはみ出ることを」

『有吉ぃぃeeeee!』総合演出インタビュー

 毎週日曜日の22時より放送中のバラエティ番組 『有吉ぃぃeeeee!そうだ!今からお前んチでゲームしない?』(テレビ東京系)。芸能界きってのゲーマー・有吉弘行が、タカアンドトシ、アンガールズの田中卓志らと共に毎回様々なタレントの自宅を訪れ、eスポーツゲームで対戦するもので、ゲーム番組とバラエティ番組の両軸で視聴者を楽しませている。演者たちのゲームの腕前も成長し続けるうえ、プレイ動画をTwitchやYouTubeで公開するという、かつてない形の番組であることから、ゲームファン・お笑いファンからも高い評価を得ている番組だ。

 前回は番組の仕掛け人であるプロデューサー・平山大吾氏を直撃したが、今回はインタビューシリーズの第二弾として、総合演出を務める岩下裕一郎氏を取材。『やりすぎ都市伝説』『SKE48 ひとっ風呂』や『ありえへん∞世界』『落ちましておめでとうございます!』『ざっくりハイタッチ』など人気バラエティ番組を多数手がけてきた彼が、番組を作る上で工夫したポイントとは? ゲームとお笑いへの愛情が深い同氏ならではの発言が次々と飛び出した。(編集部)

【記事の最後に、番組ステッカーのプレゼント企画あり】

「ゲーム会社に全力で止められた」 

ーー岩下さんは「総合演出」ということで、実質的に番組の全体像を管理している立場だと思います。具体的にどんな部分を担当されているのでしょうか?

岩下:全部といえば全部で、最初のうちは番組のテイストを整えたいということで、構成から最終的な編集までを手がけています。もともとゲームが好きなので、取り上げるタイトルも考えますし、公式ツイッターもほとんど全部更新しています。

ーーこれほどゲームをやりたくなる番組は、ほかにないと思います。第一に、総合演出としてどんな番組にしようと考えたのでしょうか?

岩下:eスポーツをテーマにした番組は他にもたくさんあり、『有吉ぃぃeeeee!』は後発でした。そこで、差別化するにはどうすればいいか、プロデューサーの平山とずっと考えていたんです。スタジオ収録ではどうしても落ち着いた感じになるし、ロケスタイルがいいんじゃないかと考えたのですが、ロケでゲームってどうするの?と(笑)。

ーーなるほど。それで、前半に街ブラのロケパートがあり、毎回タレントさんの家でゲームをする、という構成になったんですね。

岩下:そうですね。家風のセットだと、笑いが逃げてしまったり、どうしても段取りくさくなってしまうと思って。これはテレビ東京の精神でもあるのですが、やっぱり予定調和じゃないものにしたいと。また、実際に家に行ってゲームをするとして、それをどう見せたらいいか、というのが次のハードルでした。ワイワイ盛り上がっているのをただ映すだけでは、視聴者が蚊帳の外になってしまう。そんななかで、オンライン対戦できるゲームを見つけて、会議でディレクターにプレイしてもらったら、みんなで応援できて、観ている側も一つになれたんですよね。そこで方向性が決まりました。

ーーちなみに、そのタイトルは?

岩下:第一回で取り上げた『ドラゴンボール ファイターズ』です。身内同士の対戦だと目線が散ってしまうし、どちらを応援すればいいかわからない。オンライン対戦じゃないと、勝ったときのあの盛り上がりは出ないだろうと。

ーースポーツ的な盛り上がりが出ますよね。

岩下:そうなんです。ただ、ゲーム会社さんに「オンライン対戦をやりたい」と相談に行ったら、最初は全力で止められたんですよ。つまり、オンライン対戦だと相手が来るかもわからないし、通信環境によっては対戦できなくなるようなトラブルもあるかもしれず、とにかく何が起こるか想定できないから、番組には不向きだと。そこで、逆に「これはいいな」と思ってしまったんです(笑)。

ーー競合もなかなか出て来なそうだし、何よりテレビ東京らしい(笑)。ただ、マナーのよくないプレイヤーもいないとは言えませんし、リスクは確かにありそうです。

岩下:これまでのところ、対戦していただいた方々は本当にマナーも素晴らしくて、そこは助かっていますね。僕としては、リスクよりも予定調和じゃないところの面白さが、やはり先に立つんです。マンネリ化しそうなときでも、そういう遊びを持っていると、毎回、誰かと誰かがケンカしたり、面白いことが起きる。現時点では、そこは成功していると思います。

ーーなるほど、あえて制作側で管理しきらない領域を持たせておくのが大事なんですね。ただ、怖くないですか?

岩下:めちゃくちゃ怖いですし、担当ディレクターは「番組として計算できるところを用意しておきたい」と思っているでしょうね。僕もロケ前日は寝汗でビショビショになるくらい緊張感を持っていますし、「今日はどう出るか」と不安もあります。

ーーあのゆるさもある楽しい番組の裏に、そんな緊張感があったとは(笑)。

岩下:それに、「対戦する」「協力プレイする」くらいの流れしか決めておらず、台本はあってないようなものなので、有吉さんをはじめ、演者さんにも負荷がかかっていると思います。例えば、『パワプロ』(実況パワフルプロ野球2018)を取り上げた回では、想像していた以上に全然打てずに、みんな負けてしまって。ロケ車のなかは、本当に部活で強豪校に負けたみたいに、みなさんうなだれていたんですよ。でもこの本気感は絶対、面白くなる! と思って、「大丈夫です! 編集任せてください!」とロケ車の中で、勇気を出してお伝えしました(笑)。

ーーこれも“ガチ”のオンライン対戦ならではですね。逆に、初回の『ドラゴンボール』では思いもよらず勝ってしまったり。

岩下:そうなんですよ。やっぱりそこで、他にはない番組になっていると思います。ゲームは好きでも、「オンライン対戦をやってみよう」というところまでいかない人が多いですよね。そういう人でも楽しそうだと思ってほしいし、勝っても負けても、ゲームでこんなに盛り上がれるんだ、というところは大事にしたいなと考えています。

ーー親近感のわくプレーで、確かに自分もチャレンジしてみようかな、と思えます。そのなかで、アンガールズ田中さんのように何十時間もやりこんでくる人もいて、グラデーションが面白いですね。逆にいうと、バラエティに寄り過ぎればゲームを扱う意味が薄れ、ゲームに寄り過ぎるとライトな視聴者を置いてけぼりにしてしまう、という部分もあり、『有吉ぃぃeeeee!』はそのバランスが絶妙だと思います。

岩下:ありがとうございます。そのあたりは、最初にロケでお土産を買って、そのあとに家でゲームをする、という流れを考えたプロデューサーの平山がさすがだなと思います。いきなり家に入ってゲームをするのではなく、楽しい空気を作ってから家に行くので、視聴者もその仲間に入ってゲームと向き合えるというか。ゲームの説明は最低限で、番組キャラクターなどのビジュアルや、コメントフォローはゆるいテイストにして、ゲームゲームしないようにしています。『マリオカート』などは、テロップでアイテムを紹介するだけで、ナレーションは入れず、「知りたい人は読んでね」という感じにしました。

 ちなみに、コメントのテロップは、入社2ヶ月の新人ADが全部入れているんですよ。普通のコメントフォロー入れたくなくて。ガチガチのテレビマンだと注目しないようなコメントを拾っていたりして、YouTuber的というか、テロップを読むだけでも楽しめると思います。

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