アメリカはラッパーが殴り合うゲームを出すべきだーー『Def Jam』シリーズ続編への期待

 日本でキムタクが殴り合うゲームが出ている今こそ、アメリカはラッパーが殴り合うゲームを出すべきだ。何の話かと言うと、早く『Def Jam』シリーズの続編を出してくれという話である。既に3作品が出ている同シリーズだが、今回はその中でも個人的に特に推したい『Def Jam: Fight for NY』(2004年)を中心に、同シリーズの魅力と今後への期待を語っていきたい。

 ……と、その前にまずDef Jamとは何か? を簡単に説明しよう。Def JamはHIP-HOP系ミュージシャンが集うレコードレーベルである。古くはLL COOL J、Public Enemyなどを擁し、現在も伝説的ラッパーのNasやスッカリお騒がせセレブとしてもおなじみのKanye Westと言った、有名どころが所属している。ざっくり言うなら、HIP-HOP、とりわけラッパーに強いレーベルだ。そして今回ご紹介しする『Def Jam: Fight for NY』はDef Jamの人たちがFightする、つまりラッパーが戦う対戦格闘ゲームである。もちろん、ここで言う「ラッパー」とは実在するラッパーのことだ。

 我々日本人には『たけしの挑戦状』(86年)という金字塔のせいか、「芸能人のゲームってヤベェな」という認識がDNAレベルで刻み込まれている。しかし、このゲームに関しては心配無用。開発は『バーチャル・プロレスリング』シリーズや、『プリパラ』シリーズを手掛けている日本のゲーム会社シンソフィア(当時の名前はアキ)であり、格闘ゲームとして極めて高いクオリティに仕上がっている。操作性はいいし、カッコいいものからギャグに振ったものまで、必殺技が決まった時はとにかく気持ちがいい。また昇竜拳をマトモに出せない筆者でも爽快にストーリーモードを全クリアできたので、たぶん誰がやっても楽しくプレイできるはずだ。主人公のキャラメイクも充実しており、対戦格闘ゲームとしてシッカリしているのは間違ない。そんなわけで単体のゲームとして高い完成度の本作であるが、やはり白眉は実在のラッパーが出てくる点だ。序盤で仲間になるICE T、ラスボスとして立ち塞がるスヌープドッグ!  この業界での超大物である彼らと拳を交え、「お前やるじゃん」と認められると単純にテンションが上がる。ある意味での夢女子的な快感があると言っていいだろう。

 そんな『Def Jam』シリーズであるが、何故に今さら10年以上前の本作の話をしたかと言うと、去年の夏、Def Jamがシリーズ新作を匂わせるコメントが出したのに、今日まで何も続報がないからである。Def Jam公式Twitterが意味深に1作目に当たる『Def Jam Vendetta』(03年)の画像と、「今作るなら誰がいいかな?」的な呟きをしたのだ。これはもう作るしかないだろうと思っていたら、何もないまま年が明けてしまった。

 アメリカのDef Jam関係者がこれを読んでいる可能性も0ではないだろう。私は今、この場を借りてDef Jamの新作を作ってくれと叫びたい。シリーズの最新作は『Def Jam: Icon』(07年)で止まっている。正直『Icon』は微妙な出来であり、『Fight for~』のような完成度の高い新作をプレイしたい。ゲームの技術はあの頃よりさらに進化しているし、ラップのシーンも大きく変わった。ラップはポップチャートを賑わせ、面白い(キャラの立った)ラッパーが次々と登場している。「逆に今作らなかったら、いつ作るの?」というレベルだ。

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