『四月一日さん家の』五箇公貴Pが語る、“VTuberドラマ”の可能性 「アニメと人間の中間的な魅力がある」

『四月一日さん家の』五箇公貴Pが語る、“VTuberドラマ”の可能性 「アニメと人間の中間的な魅力がある」

 人気バーチャルYouTuber(以下、VTuber)たちが出演するシチュエーションコメディドラマ『ドラマ25 四月一日さん家の』(テレビ東京ほか)が4月19日にスタートする。ときのそら、響木アオ、そして新人VTuberの猿楽町双葉が、東京下町の一軒家に住む「四月一日(わたぬき)三姉妹」役に挑戦する本作。今回は在京キー局として意欲的な取り組みを続けるテレビ東京の五箇公貴プロデューサーに、制作の経緯とその魅力を聞いた。(編集部)

『やっぱり猫が好き』を2019年にやったら全員バーチャルだった

ーーVTuberでドラマを撮る、という画期的な試みですが、制作のきっかけは何だったんでしょうか。

五箇公貴(以下、五箇):僕は今までテレビ東京で深夜ドラマや映画を制作してきたんですが、評判も良いことが多くなってきた反面、「冒険できていないんじゃないか」と考えていたんです。作家の酒井健作さんと企画会議をしていた時に、酒井さんが『サイキ道』(テレビ朝日系)でMCに電脳少女シロさんを迎えていたので、「VTuberと一緒にできたら面白いんじゃないか」という話になって。そこから色々見ていくうちに、VTuberという存在に可能性を感じて、「この子たちが女優として演じるドラマを作ったら面白いんじゃないか」と考え始めたのがきっかけです。

ーーVTuberのどんなところに可能性を感じましたか?

五箇:アニメのようにコンテを切って、声を吹き込むのではなく、彼女たちが自分自身で発信しているというところが面白いですよね。だからこそ、リアルな女優と同じように、自分以外のものを演じるというのは、構造的にも面白いそうだと思いました。

ーーなるほど。だから彼女たちのモデリングもそのままに、普段の服装ではなくスタイリングを入れて登場させたんですね。

五箇:そうなんです。スタイリングは細田守さんの作品をよく担当されていて、とても信頼している伊賀大介さんにお願いしました。実際に会議室に洋服を持ってきて、ボードに彼女達の顔を貼って「このキャラクターだったらどんな服を着ているだろう」と細かく、監督も含め話し合いました。

ーー確かに服装がリアル寄りな装いになっていました。

五箇:普段、彼女たちが活動している洋服は、少しコスプレっぽかったり、アニメ寄りなものが多いですが、今回はドラマなのでファストファッションに近いものをベースに考えました。例えば、ときのそらが演じる一花は「絶対領域があるニーハイを履いていて、スピリチュアルな部分があるから石っぽいペンダントをしているんじゃないか」とか、響木アオが演じる三樹は「IT系で落合陽一さんが好きだとしたら、割とまじめで、多分下が太いボトムスでモノトーンだよね」とか、猿楽町双葉が演じる二葉は「割とコミュニケーション上手で、アパレル店員だから……」みたいな感じで、伊賀さんがどんどんアイデアを出してくれました。僕らもスタイリングから物語にキャラクターを反映したり、相乗効果がありましたね。

ーー服装はリアルな物をモデリングして取り込まれたんですね。

五箇:そうですね。例えばバンドTシャツを着せたりするのは、動く時にその細かい絵面も動かなきゃいけないのですごく大変で、技術的に実現できていません、ただ、世界観的に、バーチャルだからリアルなものがたくさん出てくる方が、絶対にそのギャップが面白い。だから色々許可を取り、実名を出したりしました。

ーー確かにお話のなかで、現実に存在するものの固有名詞がかなり出てきますね。

五箇:あれがやっぱり面白さかなと思います。

ーー背景やアイテムなどは、全部作り込んでいるんでしょうか?

五箇:作りました。まず、360度のフル3DのCGのセットを作って、彼女たちをそこにログインさせるんです。だから監督はそのログインしたモニターを見ながら、芝居をつけてるんですよ。

ーーリアルなドラマの撮影に近いですね。

五箇:4画面でそれぞれ違うアングルにカメラを置いて、それを見ながら監督が「もうちょっと一花が前に来ないとかぶる」とか、「座る位置がここだと奥すぎるから手前に来て」とか言いながら撮影していました。

ーーそうなると演技経験が必要になってくると思うのですが、彼女たちは事前に演技の練習はされたんでしょうか?

五箇:何回かリハーサルはやりました。3、4話ぐらいまではクランクインの日にセットが間に合わなくて撮影できなかったのでリハーサルをして、3姉妹の空気感を作っていきました。

ーー舞台が限定されたシチュエーションコメディを選んだのは、やはり制作が大変すぎるから、ということもあるのでしょうか。

五箇:それもありますが、より大きいのは「わかりやすいものが1番良い」と考えているからですね。例えばサスペンスで森の中に行ったり、街に行ったりするとその背景を全部描かないといけなくなり、確かにお金もかかるのですが、それ以上に、フル3DCGのアニメと同じことになってしまう。彼女たちは一人称で画面の向こうの人に向かって語りかけるのが通常の活動なので、同じ場所に3人が一緒にいて、そこで物語を展開する多分できると思いました。なので、シチュエーションコメディがいいかなと。あとは、1980年代に放送されていた『やっぱり猫が好き』(フジテレビ系)を2019年にやったら全員バーチャルでしたっていう。ゴールとしてはそういうものを目指しました。

ーーなるほど、アドリブやハプニングも面白さになっていた『やっぱり猫が好き』が念頭にあるんですね。あらためて、VTuberの特性はどういうところだと思いますか?

五箇:VTuberの特性として、アニメと人間の中間的な魅力があると思います。例えば、同じことをハイスペックの超ゴリゴリのCGでやっても話題にはならないだろうし、ちょっとツッコミどころがあるというか、温かみを感じられるのがいいところで。シチュエーションコメディをアニメでアフレコしていくと、脱線したり、いきなりアドリブを続けたり、変に噛んで笑ったりという、不確定なものは入りにくけれど、VTuberにはそういう遊びがある。見た目は3DCGなのに手法は実写で行うのが独特の面白さだし、アニメほど技術的に綿密にできないところもあるので、そこを逆に面白がってもらえるんじゃないかなと思いました。

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