「V(バーチャル)の音楽」第1回:キズナアイ、輝夜月、YuNi……VTuberの音楽を切り開いたアーティスト3組

 みなさんこんにちは。今月からリアルサウンドでVTuber/バーチャルタレントの音楽についての連載を担当させてもらうことになりました、ライターの杉山仁です。

 僕はもともと海外の音楽を扱う専門誌で編集者をしていて、数年前に独立してからは国内外問わず様々なジャンルの音楽を中心に、映画/アニメ/ゲームなどエンターテインメント全般でライター/編集者をしています。興味の幅が広いこともあって、「一体何が好きなんですか?」と聞かれることも多いのですが、中でもここ数年特に興奮しているのが、VTuber/バーチャルタレントによる音楽=「Vの音楽」です。

 2019年に入って総数8000人を超え、今なお増え続けるVTuberは、2018年末にネット流行語大賞のグランプリを獲得するなど国内で大きな話題となり、最近では中国を筆頭に海外にも活動の場を広げつつあります。その最大の魅力は、動画投稿やライブ配信を通して日常的にファンと相互にコミュニケーションを取りながら、リアルとバーチャルを繋ぐユニークな文化を生み出していること。「てぇてぇ(=尊い)」を筆頭にここから広まったネット用語も多く、日々新たな文化/音楽が生まれています。第一回となる今回は、現在に繋がるバーチャルYouTuber/バーチャルシンガーの音楽を切り開いてきた3組のアーティストを紹介しようと思います。

Kizuna AI / 「hello, world」 Live ダイジェスト映像公開!

キズナアイ

 まずはバーチャルYouTuber界の“親分”ことキズナアイ。バーチャルYouTuberの文化は、彼女が2016年11月29日に動画投稿をしたことではじまりました。アーティスト活動としては、昨年4月に『ニコニコ超会議』で開催された多ジャンルのアーティストが集う「超音楽祭」で大トリを担当。その後誕生日の6月30日に「AI Party! 〜Birthday with U〜」を開催すると、7月にはアーティスト活動時に使用するKizuna AI名義でNorがプロデュースした初のオリジナル曲「Hello, Morning」を配信。昨年末にかけては豪華トラックメイカーを多数迎えて9週連続でオリジナル曲の配信を行ない、12月に東京/大阪でワンマンライブ『Kizuna AI 1st Live “hello, world”』を敢行。そして今回、5月15日に初アルバム『hello,world』を発表しました。

Kizuna AI - AIAIAI (feat. 中田ヤスタカ)【Official Music Video】

 この『hello,world』は、デビュー曲からTVアニメ『バーチャルさんはみている』(TOKYO MX)の主題歌「AIAIAI (feat. 中田ヤスタカ)」までの楽曲を網羅し、昨年末のライブの様子も映像で収録した現在までの音楽活動の集大成。CDジャケットも9週連続リリース時のジャケットがコラージュされたものになっています。また、昨年の1stライブに続いて使われた『hello, world』というタイトルは、『プログラミング言語C』から広がった最も初歩的なプログラミング言語の基本文法解説例「Hello, World!」を連想させるもの。まさにKizuna AIとしてのスタート地点であることを表現するような雰囲気です。サウンド面での特徴は、「世界中のみんなとつながりたい」という自身の目標を反映するように、言語を超えて人々と繋がりやすいダンスミュージックを基調にしていること。特に初期の楽曲は、00年代末~10年代初頭のハドソン・モホークやラスティの諸作をルーツにして2012年頃からネット上で広まった音楽=フューチャーベースを基調にしていました。

Kizuna AI - Hello, Morning (Prod.Nor)

 その後、昨年の9週連続リリースを続ける中でEDM的なビッグルームハウスやドラムンベースなど音楽性の幅を拡大。彼女自身が歌詞を担当している楽曲も多く、「未来に向かって進むこと」などへの気持ちが綴られた歌詞は、シーンを引っ張ってきた彼女だからこそ心に響きます。今年4月にはkzが作詞作曲を担当した劇場版アニメ『LAIDBACKERS -レイドバッカーズ-』の主題歌「Precious Piece」も発表。夏にはVTuberとして初めて『Summer Sonic 2019』への出演も決定するなど、引き続き新たな扉を開き続けています。思えば、今年4月に『ニコニコ超会議2019』内で開催され、ミライアカリ、電脳少女シロ、猫宮ひなた、月ノ美兎、田中ヒメ&鈴木ヒナによるユニット「バーチャルリアル」を筆頭に総勢100名のVTuberが集結した『VTuber Fes Japan 2019』も、昨年彼女がひとりで「超音楽祭」に出演したことから広がった出来事と言えそうです。

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