Apple、新しいiPod touchを発表 『Apple Arcade』普及のための布石か?

 AppleがMac以外の主力製品をラインナップするきっかけとなった製品が、久しぶりに新しくなる。もっとも、発表された新製品のアピールポイントを見ていくと、当初想定されていた利用法よりも“あの新サービス”に使われることを強く意識していることがわかる。

ゲームもできる音楽プレーヤー?

 Appleは28日、何の前触れもなく新しいiPod touchを発表した。前世代のiPod touchのリリースから実に4年ぶりである。周知のように、iPod touchはその前身となる携帯型音楽プレーヤーiPodにタッチスクリーンを実装したものである。この新製品の公式ページを見るとはじめに音楽が楽しめることが明記されているが、新製品のアピールポイントはむしろ音楽視聴以外の機能にあるようだ。

 同製品にはiPhone 7/7 Plusにも実装されているA10 Fusionチップが実装されているため、処理能力は前世代より最大で2倍、グラフィック能力は最大で3倍になった。こうした性能アップから恩恵を得るのは、音楽ではなくゲームだ。処理能力向上によりARゲームとARアプリにも対応している。なお、ディスプレイにはRetinaディスプレイを採用している。

 同製品は、Appleが3月に発表したゲームストリーミングサービスApple Arcadeにも対応している(下の画像参照)。上記のようなグラフィック性能を誇っているので、iPhoneと変わりなくこのサービスを利用できるだろう。

画像出典:新しいiPod touch公式ページ

 同製品の価格は、Apple製品としてはお手頃な32GBモデルで¥21,800、128GBモデルで¥32,800、256GBモデルで¥43,800となっている。カラーはピンク、シルバー、スペースグレイ、ゴールド、ブルー、そして売上の一部が「世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)」に寄付される(PRODUCT)RED™が用意されている。

もはやApple Arcade専用ゲーム機

 新しいiPod touchについて多数の海外メディアが報じているが、その多くが同製品を音楽プレーヤーとは見なしておらず携帯ゲーム機として評価している。テック系メディア『Techrader』は、A10 Fusionチップが実装された同製品をゲーム用に最適化されたものと評している。そのうえで、同製品の価格が実質的にApple Arcadeを利用するうえで支払うべき最低限のハードウェアへの投資額だろう、と述べている。

 テック系メディア『Digital Trends』は、同製品がARゲームに対応していることに着目している。言わば「iPhoneの下位互換」であるiPod touchに新しいチップを実装してARゲームにも対応させたのは、AppleがiPod touchという製品カテゴリーを同社が推進するAR普及戦略に参画させるためだろう、と同メディアは語っている。

 音楽メディア『LOUDWIRE』は、音楽ストリーミングサービスを利用するのであればiPhoneがあれば事足りるのに、果たしてユーザはさらに新しいiPod touchを購入するだろうか、と述べて新製品の需要について疑問を呈している。こうした疑問は、極めて的を射ている。確かにiPod touchという製品カテゴリーは、音楽プレーヤーとしてはもはや用なしかも知れない。しかしながら、新製品は携帯ゲーム機としての機能を強化したものである。それゆえ、音楽ファンの需要はないかも知れないが、ゲームファンのそれは見込めるのだ。

 同製品は、オフラインでもゲームプレイが可能というApple Arcadeの仕様と相性がよい。家庭のWi-Fi通信を使ってゲームをダウンロードしてしまえば、携帯通信網が使えない同製品であってもApple Arcadeのゲームがプレイできるというわけである。それゆえ、AndroidユーザがApple Arcadeを楽しむために同製品を買う、ということも想定できよう。

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