歌広場淳が語る『EVO Japan 2020』で出会った“奇跡” 「注目を浴びるシーンではこういうことが起きる!」

歌広場淳が語る『EVO Japan 2020』での“奇跡”

 大のゲームフリークとして知られ、ゲーマーからの信頼も厚いゴールデンボンバー・歌広場淳による連載「続・格ゲーマーは死ななきゃ安い」。今回は歌広場がプレイヤーとして参戦し、予選ブロック1日目を突破するという活躍を見せた『EVO Japan 2020』(1月24日~26日/幕張メッセ)について、大いに語ってもらった。歌広場が「注目を浴びているコンテンツならではの奇跡」と評した出来事とは?(編集部)

ゲームが“見下ろす”ものから、“見上げる”ものに

 1月24日から26日まで幕張メッセで開催された、今年で3回目の『EVO Japan 2020』。僕は池袋サンシャインシティと秋葉原UDX アキバ・スクエアで開催された1回目にも、福岡国際センターで開催された2回目にも参加してきましたが毎回場所が変わり、次はどういう場所でどんな雰囲気になるのか、と楽しみにしてきました。今回は過去2回にも増して、本当に素晴らしい大会だったと思います。

 僕自身のことで言うと、過去2回はプレイヤーとして『ストリートファイターV』部門に挑戦したほか、お仕事として関わらせていただいた部分がありました。今回はお仕事ではなく、プレイヤーとしてのみ参加するかたちだったのですが、そのときに、「密着します」と言ってくれた媒体さんがいくつかいらっしゃって。もちろん、僕が参加しなくても大会の取材はしていたと思うのですが、最初から仕事ではなく、僕が参加することで、ゴールデンボンバー・歌広場淳を通じて多くの人に『EVO Japan』という大会を伝える機会が生まれたと思うと、とても感動的でした。大会への集客や動員という面で、これまでだったら「芸能人を呼ぶ」という選択肢が大きかったかもしれませんが、ゲーム自体、そしてプレイヤー自体に大きな魅力があるんだということに目が向いていくフェーズに入っていく過程なのだろうと思いました。

 僕がプレイヤーとして目標としていたのは、これまでできなかった、プール(1日目の予選ブロック)を抜けて、2日目以降に残ること。結果的にそれが叶えられたのが、本当にうれしかった。当初の気持ちとしては、2日目に残ることができれば即敗退でも御の字だ……と考えていたんです。例えば、サッカーのW杯に初出場したチームだったら、本戦で勝てなくても大きな一歩でしょう。でも、僕は2日目の1回戦で負けて、心の底から悔しかった。ゲーム自体はもちろん楽しいものだけれど、こうした大会で、本当に楽しい気分で帰れるのは優勝した一人だけなんだと、あらためて思い知りました。プロゲーマーの方と交流する機会も増えているなかで、大会で敗退した選手に対して、「残念でしたね。次も応援しています」ではなく、今後はもっと他の言葉をかけて、励ましたり、寄り添ったりできるんじゃないかと。これも、個人的には大きな収穫でした。

 『EVO Japan』については、本当に毎回、「やってくれてありがとう」という気持ちが根底にあります。僕は自分が負けてしまったあと、3日目は配信で観ることもできたのですが、気づけば会場に来ていて、熱狂的に応援するあまり声を枯らしていました。そうやって、少しでも盛り上げたかった。『ストV』の決勝トーナメントでは、スクリーンの目の前で、映画館の最前列のように首を痛くして、応援していました。

 僕は前々から、ゲームがスマホでできる手軽なものになり、それに合わせて手元を“見下ろすもの“になってきているなかで、eスポーツの参考になるのは、それよりフィジカルのスポーツだと考えてきました。サッカーやラグビーのW杯も、野球のWBCもそうですが、世界中を巻き込むような熱狂を生み出すものは、渋谷のスクランブル交差点やスポーツバーで“見上げている”ものなのではと。見下ろすものから、見上げるものにーーそれが僕が近い将来、eスポーツに期待することなのですが、それを自分自身が首を痛くして体験したんです。

 さて、僕が声を枯らした『ストV』の決勝は、若手のナウマン選手と、格ゲーファンなら誰もが知る古豪・マゴ選手の戦いになりました。ナウマンくんは僕がずっと追いかけてきた選手で、プレイヤーとしてはもちろん、顔がイケメンなのも推しのポイント。マゴさんも好きな選手ですが、近年の圧倒的な強さから黙っていても必ず栄光の瞬間はあるだろうと思い、逆張りの気持ちも込めて、僕はナウマンくんを全力で応援しました。

 ナウマンくんはゲームに取り組む姿勢も、プレイの内容も自他共に認める真面目な子です。だからこそそれが報われる瞬間が見たかったし、何より彼が勝ったほうが、みんなが「自分にもできる」と思えるんじゃないかと。経験と知識が豊富で、明らかに強いオーラが出ているマゴさんに対して、一見、ゲームとは無縁そうな「普通」の若者が勝つ。ゴールデンボンバーがみなさんに親しみを持ってもらえているのも、楽器を弾けないのに楽しそうだし、観ていてもなんか楽しいからで、つまり観終わった後、「自分にもできるかもしれない」という気持ちになるからだと思うんです。そんな思いもあって、気がつけば大声で応援していました。

 結果としてナウマン選手が勝ち、もともとはマゴさんの応援が多かったくらいの会場も大盛り上がり。僕は“構造フェチ”なので考えてしまうのですが、話題になるものにはひとつ、メタなところで乗っかっている物語があります。例えば、僕がこれまでに対戦した試合の中で一番盛り上がったのは、格ゲーがうますぎる高知のゆるキャラ"しんじょう君”との一戦でした。これが話題になったのは、リュウ対ケンというライバルキャラクターを使っての対戦だったことが、とても大きかったんです。そして今回の決勝でナウマン選手が使ったのはサクラ、マゴ選手が選択したのはカリンというキャラクターで、こちらも作中でライバル関係にある。『ストリートファイター』シリーズを追いかけてきたファンなら、絶対に熱いものを感じるはず。

 また、サクラは正統派のキャラクターで、それが正統派の勝ち方をしたことも、観ていて気持ちのいいポイントでした。大会では、キャラクターの尖った部分を押し付けて相手を倒す、というシーンも多いのですが、知らない人からすると「なんで勝ったの?」ということになりがちです。今回の試合はそうはならず、かつ相手側であるマゴさんの強さもしっかり際立った上での勝利だった。こういう試合がたくさん観られれば、自然とシーンは盛り上がり、広がっていくと思います。否応なくそういうことが起きてしまうこと自体が、注目を浴びているコンテンツならではの奇跡なのだと、大げさではなく感じた瞬間でした。

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