LIL LEAGUE、成長したからこそ魅せられる鮮烈なギャップ 内面を重ねた葛藤表現への挑戦

LIL LEAGUE、葛藤表現への挑戦

 2022年、LDH史上最大規模のオーディション『iCON Z ~Dreams For Children~』男性部門でグランプリを獲得し、アーティストの仲間入りを果たしたLIL LEAGUE。NEO EXILE世代の筆頭となる6人組グループが、1stアルバム『TRICKSTER』をリリースした。デビュー以来、キラキラとした笑顔で夢と希望を届けてきた彼らが今作で描くのは、夢の裏にある“現実”。10代ならではの葛藤や苦悩、アーティストとして直面している闇の部分を、彼らはどう受け止め、パフォーマンスに昇華したのか。リード曲「Lollipop」や新録曲の制作エピソードを通して、LIL LEAGUEの今に迫った。(斉藤碧)

「今のLIL LEAGUEなら表現できると前向きに受け取った」

――1stアルバム『TRICKSTER』がリリースされた今、どんな手応えを感じていますか?

難波碧空(以下、難波):タイトルの『TRICKSTER』に“いたずらっ子”や“悪ふざけ”という意味があるように、LIL Friends(LIL LEAGUEファンの通称)のみなさんの予想を良い意味で裏切れるアルバムになったんじゃないかなと思いますね。今作は僕たちにとって初のアルバムということで、オーディション課題曲の「Rollah Coaster」やデビュー曲「Hunter」をはじめ、これまでにリリースさせていただいた楽曲を多数収録しているんですけど、新たなアーティストビジュアルやリード曲「Lollipop」では、ダークでミステリアスな世界観を表現していて。僕らも新たな自分を発見しながら、楽しみながら制作させていただきました。

――昨年リリースした「Monster」(2ndシングル『Higher / Monster』収録)もダークな曲調で、明るくのびやかな「Higher」とのギャップを見せていましたが、新曲「Lollipop」(Lyrics by SHOKICHI/Composed by TokyOdds, SHOKICHI, SKY BEATZ)では、LIL LEAGUEの“裏”の部分を全面に押し出していて。1stアルバムという1つの集大成でありながら、次の展開の幕開けでもあるんだなという印象を受けました。

山田晃大(以下、山田):そうですね。もともとLIL LEAGUEは「若い力と勢いをバイブスに変えてほしい」という想いで名づけられたグループですし、デビューして間もない頃はポジティブな部分を全面に出して、等身大の言葉やパフォーマンスを届けてきたので、「Lollipop」を聴いてギャップを感じる方もいると思います。僕自身も、こういうスリリングで大人びた楽曲がアルバムのリードになると聞いた時は驚きました。でも、デビュー1年目の2023年は、本当にいろいろなことに挑戦させていただいて。1年とはいえ、自分たちで成長を実感できる期間になったので、アルバムではその成長を見せたいという気持ちもあったんです。最初にSHOKICHIさんから「Lollipop」のデモをいただいた時は、華やかな芸能界で生きる僕らの「表と裏」がテーマということで、歌詞も曲調も少し背伸びした楽曲だなと思ったんですが、今のLIL LEAGUEなら表現できるんじゃないかなと、前向きに受け取ることができました。

――曲作りに入る前にも、SHOKICHIさんと打ち合わせをする時間があったんですか?

岩城星那(以下、岩城):アルバム制作に入る前は、SHOKICHIさんや作家のみなさんに自分たちの気持ちを細かいところまでお伝えする機会はなかったのですが、年下組(岡尾・百田・難波)は中学3年生なので、思春期特有の葛藤や悩みを抱えているだろうと、SHOKICHIさんがおっしゃっていて。そんな成長過程のLIL LEAGUEを具現化するために作ってくださったのが、「Lollipop」でした。個人的には、いただいたデモを聴いたら、自分の気持ちを代弁してくれているかのような歌詞が乗っていたので驚きましたね。全部見透かされてる! みたいな(笑)。(岡尾に向かって)そういう感じ、しなかった?

岡尾真虎(以下、岡尾):(食い気味に)しました! 「すごい! SHOKICHIさん!」って感じました。

――「Lollipop」の歌詞からは、アーティストとしてハードな毎日を過ごすみなさんの姿が浮かびましたが、鋭い言葉の裏にはLIL LEAGUEをずっと見守ってきたSHOKICHIさんの愛がありますよね。

百田隼麻(以下、百田):はい、そう思います。歌詞自体は、厳しい現実を突きつけるような内容だなって思うんですよ。歌詞にも〈甘いだけじゃない〉ってあるし。でも、それが今、僕らが見ている現実なので。SHOKICHIさんが僕たちのことをずっと見てくれていて、よく理解してくださっているんだなっていうのが歌詞から伝わってきました。

岩城:その上で、メンバー一人ひとりが、今のLIL LEAGUEが「表と裏」を表現する意味を考えながらレコーディングに取り組めたので、言葉を交わさなくとも、楽曲を通してSHOKICHIさんと1つになれたというか。楽曲を通して対話できたという感覚がすごくあります。

岩城星那、難波碧空

――また、サビのメロディに引用されているのは、エドヴァルド・グリーグ作曲の組曲「山の魔王の宮殿にて」。舞台『ペール・ギュント』において、主人公が魔王の手下たちに追われる場面に合わせて作曲されたというこのフレーズは、聴き馴染みのある方が多そうです。

中村竜大(以下、中村):SHOKICHIさんに書いていただいた曲って、どの曲も耳に残るフレーズが散りばめられているんですよね。中でもこのメロディは有名なので、僕らもデモをいただいた時から自然とサビを口ずさんでいて。これまでLIL LEAGUEを知らなかった方にも、興味を持っていただけるきっかけになるんじゃないかなと期待しています。

レコーディングで開拓した新しい一面

――「Lollipop」のレコーディングで、各自が力を入れたフレーズについても教えてください。隼麻さんから。

百田:はい! 僕はサビの〈今すぐ Let me be your bad boy/脳内パラノイド〉の2行に力を入れていて、特に〈boy〉と〈パラノイド〉の部分は、下から上にグイーンと歌い上げるような挑戦的な歌い方をしました。初めての歌い方だったので、SHOKICHIさんと相談しながら、正解がわからない状態でレコーディングしていったんですけど、満足のいくテイクがとれて良かったです。

岡尾:僕は1Bにあるラップパートを担当しています。〈このワンダーランド 迷い込んだら/気づけば闇堕ちのパペット〉っていうところなんですけど、この歌詞、なかなか意味深じゃないですか。一見華やかなアーティストの世界でも、油断したら足を踏み外す可能性があるよっていう、怖い歌詞だと思うんです。なので、声色や歌い回しでも不気味な感じを出したいなと。ただカッコよく聴こえればいいっていうんじゃなくて、歌詞が持つ本当のメッセージを伝えるには、どういう歌い方をしたらいいかを考えながらレコーディングしました。

中村竜大、山田晃大
中村竜大、山田晃大

――〈気づけば闇堕ちのパペット〉って、字面が強いですよね。SHOKICHIさんの音楽ルーツの1つ、ヴィジュアル系の香りを感じます。

岡尾:そうですね(笑)。これまでのLIL LEAGUEの楽曲は、明るい方向にキャッチーだったと思うんですが、今回はロリポップ(棒付きキャンディ)という可愛いモチーフの中で、中毒性の高いキャッチーさを表現していて。この歌詞もSHOKICHIさんのこだわりが強く出ている部分だと思ったので、僕も細かなニュアンスまでこだわって歌いました。

中村:僕がこだわったのは、サビ終わりの〈裏腹な素顔はまだ内緒〉ですね。サビは歌い出しからずっと低めのラインで歌い繋いでいて、僕もそこに至るまでは低音で歌ってるんですけど、最後だけ1オクターブ上げているんですよ。そのギャップが歌詞のテーマである「表と裏」を象徴していると思ったので、駆け引きを楽しんでもらうために、最後は裏声でいったほうがいいのか、チェストボイスでいったほうがいいのか、声の息の成分を多くして歌ったほうがいいのか……と、いろいろ試しながらレコーディングしました。

――逆に、サビの歌い出しの低音を担当しているのは碧空さん?

難波:はい。今までに歌ってきた曲のサビでは、ハイトーンで突き抜けるボーカルを求められることが多かったので、低音で淡々と歌う表現は今までにない試みでした。この曲は幅広い音域で魅せるサビが特徴なので、サビの入りでどれだけ自分らしくローを効かせられるかがポイントで。僕個人としても、LIL LEAGUEとしても新たな一面を開拓できた部分だと思うので、ぜひ注目していただきたいです。

――星那さんが力を入れたところはどこでしょうか。

岩城:1Aですね。(一切息継ぎせずに早口で)〈ソーシャルメディアも遊びじゃないのさ/一語一句 油断できない〉……わかる!

一同:あはははは!

岩城:僕らはデビュー前からオーディション番組を通して、普段の姿をみなさんにお見せすることが多いんですけど、その中で、たとえどんなに若くても、一つひとつの些細な言動で周りの評価が決まってしまうシビアな現実を見てきまして。それをデビューしてからの1年間でも実感していたので、この歌詞は気持ちがこもりました。デビュー当初のLIL LEAGUEは、「Rollah Coaster」ではジェットコースター、「Hunter」では船、「Higher」では気球に乗って新しい世界に飛び出していくワクワク感を歌ってきたんですけど、本当はそれだけじゃないよなっていう。むしろ、表で見せてきた姿が明るいからこそ、裏で抱えている葛藤や苦悩といった、アーティストの“闇”の部分が際立つと思うんです。しかも、その闇を一番ストレートな歌詞に落とし込んだのが僕のパートなので、レコーディングの時もあえて息継ぎなしで歌うことで、ギリギリの状態で生きている様子を表現しました。

百田隼麻、岡尾真虎
百田隼麻、岡尾真虎

――息継ぎなしで歌うというのは、どなたのアイデアなんですか?

岩城:SHOKICHIさんです。特に「語尾にこだわってほしい」とおっしゃっていて。その歌い方は1曲を通してみても、SHOKICHIさんが特別こだわっていた部分なので、責任重大なパートを任せていただいた嬉しさを感じながら歌いました。

山田:僕はその後に続く、〈鳥籠からFollow me/鎖壊してほら外に You know?〉というラップパートの歌い出しを担当しているんですが、ここは苦戦しましたね。それまでは星那くんも説明したように、僕らの心情を歌っているんですけど、僕のパートからは聴いてくれている人に投げかける歌詞というか。「ついてこいよ、わかるだろ?」ってリードする役割なので、そのニュアンスを出すために何度もトライしました。あと、今回はちょっと挑戦したことがあって。ただディレクションしていただくのではなく、僕のほうからも「僕はこう思うんです」って、アイデアをたくさん発言させていただいたんです。そしたら、SHOKICHIさんも「じゃあ、ここは晃大が思う通りにやってみようか」って言ってくださる場面が結構あって。今までは演者として歌っているという感覚が強かったんですけど、「Lollipop」は自分の内側から出てきた言葉として表現できているなと感じました。

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