R&Bシンガー aimi、LEJKEYSとの必然とも言えるタッグ 「I'm OK」に満ちた癒しのエネルギー

aimi「I'm OK」レビュー

 ジャンルの境界線を曖昧にするのが進歩的だとされる雰囲気もある中、臆することなく“R&Bシンガー”と謳い、その本質に迫ろうとしているのがaimiだ。気恥ずかしさもあれば空回りしているかもしれないと自覚しつつ、国内のR&Bシーンを盛り上げるため、という以前にR&Bが好きで仕方がない一リスナーとしての立場から、このジャンルの魅力を広めたいと日々アピールしている姿は逞しい。2020年以降、aimi名義で発表した作品はいずれも自主制作。信頼のおけるプロデューサーの力を借りながら、ビジュアル面も含めて全て自身でこなす彼女は、アーティスト写真などから感じられるクールなイメージとは真逆で、むしろ泥くさい。そして、ジャンルへの愛だけでなく、クリエイターやメディアに対してのリスペクトも忘れない。自身がオーガナイズするR&Bイベント『STAY READY』ではファン以外の層も巻き込んで緩やかな連帯を生み出し、ヴィクトリア・モネやSZA、H.E.R.、ケラーニといった欧米のR&Bアーティストと同時代を生きていることを伝えようともしている。EMI MARIAやJASMINEとのコラボシングルも出したaimiは、例えるならシアラやジェネイ・アイコと共演したサマー・ウォーカーのような存在だとも言える。が、それらの模倣やオマージュで満足せず、R&Bを軸としながら日本で活動するシンガー/ソングライターとしてどう表現していくか、新曲を出すたびに問いを立て、同時に答えも用意している。

 そんなaimiの最新シングルが「I'm OK」だ。ここ最近はModesty Beatsが制作したクリスピーなビートに乗って歌う曲が続いたが、今回組んだのは、初顔合わせとなるLEJKEYS(レジェイキーズ)。本名はJulian-Quán Việt Lê(黎越貫)。Julian Leと記されることもあれば、“亀チャン”という愛称もある彼は、1990年にミシガン州で生まれ、西海岸を拠点に活動するベトナム系アメリカ人のプロデューサー/鍵盤奏者だ。その名前に馴染みがなくても、AI、Awich、BENI、向井太一の楽曲に関わっていたと言えば親しみがわくかもしれない。両親の影響で3歳から習い始めたピアノの腕前は上々で、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)でケニー・バレルに師事し、ブラッド・メルドーに夢中になったという彼はジャズへの造詣も深い。同時にハドソン・モホークなど重低音が響くエレクトロニックミュージックを愛聴し、ベトナムの伝統音楽にも影響を受けた雑多な音楽性は、直近のリーダー作『Almost There』(2023年)などでも証明済みだ。

 LEJKEYSの名が広く知られるようになったのは、ジェネイ・アイコとの仕事からだろう。オーディションを受けてアイコの制作チームに加わった彼は、『Trip』(2017年)で「New Balance」を手掛け、続く『Chilombo』(2020年)では「Triggered (Freestyle)」など5曲をフィスティカフスと共同でプロデュースしていた。ディズニー映画『ラーヤと龍の王国』(2021年)のエンディングソング「Lead The Way」の制作にも関与し、キメ細やかなサウンドプロダクションでアイコのノーブルでヒーリング感のある美声を輝かせていたことも忘れ難い。今回aimiのもとにはLEJKEYSから直接メールがきたというが、アイコやユナ、旧知のアンダーソン・パークやダムファウンデッドも含めてアジアにルーツを持つアーティストとの仕事が多いアジア系の彼が、アイコの『Chilombo』を聴いて改めてR&Bに開眼したaimiと結びついたのは、偶然だったのかもしれないが必然だったとも言いたくなる。

 LEJKEYSは「I'm OK」のプロデュース、ミックス、マスタリングを担当。ソングライティングにはaimiと彼女の制作パートナーであるShingo.Sが参加し、リリックはaimiが書いている。東京のスタジオにて3人で行ったコラボについて「制作過程はとてもナチュラルだった」とLEJKEYSが語る新曲は、仄かにGファンク的なメロウネスも感じさせる90's R&Bフィーリングのあるミディアムチューン。ハイハットを伴ったシンコペイテッドなビートでスムーズに進行していく様はジャーメイン・デュプリの作風にも通じていて、どことなくXscapeの「My Little Secret」(1998年)をレミニスさせる。シャープかつ柔らかな声で日本語と英語をクロスさせながら歌うaimiはいつものaimiではあるが、普段より少しだけ抑制の効いたボーカルが凛々しくも優しい。〈okay〉を5回繰り返すフックも魅力的で、クセになりそうだ。

 「自身の弱さや葛藤を曝け出しながら、あるがままの自分を受け入れる自己受容がテーマ」という「I'm OK」は、自身を鼓舞しながら他者に寄り添って慰撫するような力強くも優しい歌だ。ひとりの人間として持つべき尊厳について押し付けがましくなく歌うこれは、aimiの言葉を借りれば、癒しのエネルギーに満ち溢れている。それは写心家の217...NINAが撮影したジャケットに柔和な表情で写るaimiの姿からも感じ取ることができる。

※参照:https://voyagela.com/interview/art-life-julian-quan-viet-le/

aimi 「I'm OK」ジャケ写
『I'm OK』

■リリース情報
シングル『I’m OK』
アーティスト:aimi, LEJKEYS
発売日:2024年4月17日(水)
ダウンロード/配信:https://orcd.co/imok_aimi

■ライブ情報
Spincoaster presents aimi “I'm OK” Release Party
日時:2024年4月19日(金)OPEN 18:00
会場:東京 恵比寿 BLUE NOTE PLACE
料金:テーブルチャージ 1,100円(飲食代別途)
出演:aimi(Vo)竹田麻里絵(Key)Zak Croxall(Ba)Willie(Ds)
※2部制(入替無し)
ライブ:19:00〜/20:15〜
※席の予約:https://www.tablecheck.com/shops/bluenoteplace/reserve

■関連リンク
Official Website:https://www.aimimusicofficial.com/
X(旧Twitter):https://twitter.com/aimi_music
Instagram:https://www.instagram.com/aimimusicofficial/
TikTok:https://www.tiktok.com/@aimi_tokyo

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